このブログを読んでいる人の中には、夫や妻の浮気を調べるために、探偵会社を利用したことがある人も少なくないのではないかと思います。
そして、その中には、探偵会社とトラブルになった人もいるのでは、と。
そこで、今回は、私が昔やった事件で、探偵会社に訴えられた人の裁判について書きたいと思います。
私の依頼者が探偵会社に訴えられたのは、探偵会社に支払うべき調査費用を支払わなかったからです。
「契約したのに調査費用を支払わなかったその人が悪いんじゃないの?」と言われそうですが、ことはそう単純ではありません。
その人が探偵会社に依頼した内容は、誰かに尾行されているような気がするので、誰が自分を尾行しているのか調べてほしいというものでした。
立派な契約書が作成され、調査は合計2回行うという内容でした。具体的な調査方法は特定されておりませんでした。
そして、何と、調査費用は、合計200万円!
誰に尾行されているかという調査は難しく、多数の調査員を担当者としてつける必要があるからだそうです。
依頼者も、素人感覚で、浮気調査と比べると、相当困難を極める調査であることは容易に想像ができました。
しかも、プロである探偵がやるんだから、相当大がかりな調査になるのだろうと思っていたそうです。
それと、何者かに尾行されているという不安と恐怖感も手伝って、200万円という高額な金額でしたけど、契約してしまったということでした。
ところが、です。
実際にやった調査はというと、依頼者に車で自宅周囲を約30分程度走らせ、その後を調査会社の車が追尾して、不審者がいないかどうかを観察するという内容で、それが2回行われただけだったそうです。
これで200万円!
依頼者は当然、「ふざけるな!」ということになり、支払を拒みました。
そうしたら、調査会社から訴えられてしまったんです。
それで、その人は、慌てて私の事務所に駆け込んできたわけです。
私は、その訴状を読んで、「勝てる!」と思いました。
まず、訴えられた金額は、わずか50万円で、簡易裁判所に訴訟提起されていたんです。
50万円という少額なので、探偵会社は代理人弁護士をつけていませんでした。
この探偵会社との契約の問題点は、調査目的はともかく、調査内容が全く特定されておらず、契約内容が極めて曖昧だったことです。
200万円の対価に対して、何をするのかが契約書からは全く分かりませんでした。
また、調査会社が50万円という少額で訴えてきた点もこちらに有利でした。
やましいことがないのであれば、200万円で堂々と訴えてくるべきです。何故に、200万円が50万円になるのか、極めて不自然かつ不合理でした。
しかも、相手が弁護士をつけていないことも幸いでした。
私が反論する法律上の争点全てに対して、素人が的確に再反論することはできないだろうと考えました。
そこで、私は、答弁書に、①契約の不成立、②錯誤無効、③詐欺取消し、④消費者契約法違反など、多岐にわたる法律上の争点を提起し、相手を混乱に陥れる訴訟戦術を取りました。
和解する意思なし、という徹底抗戦の構えで臨みました。
そうしたら、何と、その次の裁判期日の前に、あっさり訴えを取り下げてきたのです(笑)。
反論できなかったんですね。調査会社も依頼者に金員を請求するのを諦め、この事件はこれでめでたく解決しました。
ちなみに、この探偵会社、先日、インターネットで調べてみたら、まだありました(笑)。
こんな仕事をしていても、潰れないんですね。
しかも、ホームページ上は、そこそこ立派に見える調査会社です。女性が社長さんですごくアットホームで…。
きっと今でもトラブル起こしてるんだろうなあ…。