今日は、DV(ドメスティックバイオレンス)の被害者が採りうる防御手段の一つである、保護命令の申立てについて説明したいと思います。

 ここでいう保護命令の申立てとは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下、「DV法」という。)に規定されている、DV加害者からの被害に対する身体への暴力を防ぐため,裁判所が加害者に対し、被害者に近寄らないよう命じる決定を求める手続です。

 夫婦の一方が他方配偶者からの暴力を理由に離婚を求めているケースが多くあります。その中には、離婚の調停や訴訟の手続きを先に進めるよりも、まずは暴力から身を守るための手段を採るべきと判断されるケースも少なくありません。

 この場合、相手方のわからない場所に引っ越したり、シェルターに入ったりすることで、他方配偶者と接触を避けるという事実上の手段も有効です。

 ただし、シェルターに入っても、他方配偶者に自己の職場を知られており、結局他方配偶者からの接触を完全には防げない場合等もあります。あるいは、シェルターに入ったりして住居を移すことは避けたいと希望される方もいるかもしれません。

 こういう場合には、保護命令を申立て、申立人本人やその子、及び親族への接近禁止命令等を裁判所から相手方に対して発令してもらうことが有効です。

 この命令に違反して接近等をすれば、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金という刑罰が科されます。

 保護命令に必要な要件としては、簡単に表現すると、婚姻中に暴力・脅迫があって、今後、身体に対する暴力により生命又は身体に重大な被害を受ける恐れが大きいこと、です。

 しかし、この要件の証明責任は申立人側が負っています。証明できているか否か不安になりながらご自分で手続を全て遂行するのは大きな負担です。
 そのため、保護命令の申立てを弁護士に依頼するケースが非常に多いです。

 弁護士に依頼する意味としてはもう一つあります。保護命令の申立てが裁判所に受理されると、すぐに裁判所は申立人と面接を行います。当該面接後一週間後位に、相手方の審尋期日(事情を尋ねる機会)があります。ここで相手方に暴力等の事実の確認をします。しかし、やすやすと相手方が暴力の事実を認めるとは限らず、否認する人もいます。弁護士は、申立代理人として、審尋期日に出頭し、暴力を否認するような相手方に対して、反対尋問のようなことをして、真実の立証に寄与します。

 DVの被害に遭われている方は、すぐに弁護士に相談されることをお勧め致します。

弁護士 吉田公紀