相談

 私は2年前に妻と離婚しました。妻との間には長男がいます。調停離婚だったのですが、調停において、子供の面会交流につき、おおむね「週に1回。土曜日又は日曜日。1回につき3時間。」という条件で行うことを合意しました。

 最初の1年間は妻の方も調停での約束を守ってくれました。離婚して子供と離れ離れになってしまったのですが、週に1回子供と会い、子供の成長を見届けることは、とても幸せなことです。

 ところが、妻に新しい男ができたのか、子供が僕の方に懐いていることに妻が嫉妬しているのか、理由はよく分かりませんが、急に「子供があなたに会いたくないと言っている」などと言い訳をし、子供と一切会わせてくれなくなりました。

 面会交流をきちんと行うことと引き換えに、泣く泣く子供の親権を妻に譲ったのに、このような妻の態度は許せません。何かいい方法はないのでしょうか。

回答

1 まず、1つ目の手段として「履行勧告」という制度があります。

 これは、家庭裁判所の調停や審判で決まった事項について、違反があったときに、家庭裁判所から相手方に対して、約束を守るように指導してくれるものです。

 裁判所という公的機関から指導がなされるので、相手が応じる可能性は高くなりますし、手続きが簡便です。しかし、あくまで「指導」であって強制力はないので、今回のように相手方の態度が頑なである場合には、あまり効果は期待できないですね。

2 次に、2つ目の手段として、面会交流の調停を行う方法があります。

 生活状況の変化により面会交流の条件が合わなくなってしまったということであれば、改めて調停を申し立てて、今の生活スタイルに沿う面会交流の条件を決め直すことが考えられます。ただ、調停も話し合いの手続きですから、そもそも面会交流を全面的に拒否している場合には、実効性は乏しいでしょう。

3 3つ目の手段として、強制執行の申し立てをする方法が考えられます。

 (1) 強制執行は、調停での取り決めや審判に違反した場合に、裁判所に申し立てることで、一方的に財産の差し押さえ等を行う手続きです。

 しかし、面会交流の場面では、子供を強制的に妻から夫の元へ連れて行き面会交流を実現するといった方法の強制執行はできず、面会交流を拒むごとに一定額の罰金(1回につき約3~5万円になることが多いです)を払わせ続ける、といった間接的な方法による強制執行(間接強制)が認められています。

 (2) 最高裁平成25年3月28日決定
 ただ、どんな場合であっても、間接強制の方法による強制執行ができるというわけではありません。

 上記最高裁決定は、「調停調書に面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡の方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえるときは、間接強制を許さない旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り、上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制をすることができると解するのが相当である」と判示しており、強制執行(間接強制)を行う要件として、監護親がすべき給付が特定されていることを要求しています。

 本件では、調停において、面会交流の頻度、日時、面会交流時間は取り決められていますが、子供の引渡方法の取り決めがないので、監護親である妻がなすべき給付の特定に問題があると思われます。

 非監護親の立場からは、面会交流についての取り決めをする場合に、上記最高裁決定を踏まえて、将来の面会交流の強制執行(間接強制)を見据えたルール作りをする必要がありそうです。

弁護士 細田大貴