こんにちは。今日は、別居について考えてみたいと思います。

 夫婦関係が破たん状態になった場合、別居をする夫婦は多いと思います。
 また、世間には別居状態のまま、何十年も籍を抜いていない夫婦もいます。
 別居という事実は、離婚の際、どのような効果があるのでしょうか。

1 財産分与の対象

 離婚の際、財産分与として双方の財産をどのように分けるかが問題となります。その際、考慮されるのは、「夫婦が同居のうえ、協力して作り上げた財産」になります。つまり、籍だけ残っていても別居期間がある場合、財産分与は別居までの財産を考慮すればよく、その後に一人で形成した財産は対象にならないということです。この点、財産分与の対象を離婚時の全財産と勘違いしている人も多いと思いますので、注意が必要です。

2 離婚事由

 こちらが離婚したいと思っていても、相手方が離婚は嫌だと拒否し、別居が続いているような場合、裁判所は離婚事由の判断要素の一つとして、同居期間と別居期間、という点を見ています。もちろんそれだけではないですが、同居期間に比して別居期間が相当長いような場合は、婚姻関係が破たんしていることの要素として考慮される場合があります。

3 嫡出推定の排除(推定の及ばない子)

 夫婦としての籍がある以上、妻が婚姻期間中に懐胎した子は夫の子と推定され(民法772条1項)、出生届を提出すれば自動的に夫の嫡出子として戸籍に記載されます。この場合に戸籍上夫の子ではないとするためには、原則として、子の出生を知ったときから1年以内に、夫が、嫡出否認の訴えという手続きをしなければなりません。

 これは、出訴権者も期間も限られており、使いづらい手続として悪名高い制度の一つです。しかし、夫婦が別居して以来、一度も会っておらず、交流も一切絶えているような場合、そもそも民法772条1項の推定が及ばないとされ、出訴権者も期間もずっと自由度が高い、親子関係不存在の手続きをとることができる可能性があります。妻が不貞をしたことで夫婦が別居をし、夫が離婚に応じないような場合であって、離婚成立前に妻が不貞相手との子供を妊娠したような場合にこの問題が起こりえます。

 他にも、事実上、同居時よりお互いに冷静になって、夫婦関係を見つめなおしたり、今後の具体的な生活基盤を形成するという効果もあるでしょう。
 離婚へのステップの一つとして、別居という事実はとても重要ですね。

弁護士 井上真理