今回は、有責配偶者からの離婚請求について検討したいと思います。

 有責配偶者とは、民法770条1項各号が規定する離婚事由を自ら作出した者をいいます。主に、不貞行為を行った者が問題とされます。

 かかる有責配偶者からの離婚請求についてかつての判例は否定していました。

 しかし、その後、判例変更され、

① 別居が年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び
② 未成熟子が存在しない場合に
③ 相手方配偶者が離婚により極めて苛酷な状態におかれる等著しく社会正義に反する特段の事情がない限り

有責配偶者からの離婚請求は、信義則に反せず、許されるとしました(最判昭62.9.2)。

 それでは、①別居が年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶ場合とは具体的にいかなる場合をいうのでしょうか。

 この点、別居期間が10年を超える事案においては、当事者の年齢や同居期間との対比等の検討を要することなく、長期間であると判断されているようです。他方、別居期間が10年に満たない事案においては、同居期間や当事者の年齢と対比して相当の長期間とはいえないと判断されることがあり得るようです。

 ただ、別居期間と同居起案等を数量的に対比するのではなく、その他の②③の要件も、①の判断に密接に関係しているといえます。例えば、未成熟子がいない事案において、6年間の別居期間で離婚請求を認めた事案があります。この事案において未成熟子がいる場合、6年間の別居期間で離婚請求が認められることはなかった可能性が高いでしょう

弁護士 大河内由紀