前回は、親権についての説明をしましたので、今回は親権と密接不可分といえる程関連性の高い養育費について、お話ししていこうと思います。

 養育費とは、監護親から非監護親に対して請求される未成熟子の養育必要費用をいいます。子から親ではなく、親から親に対して請求されるものであることは、一応覚えておいてください。

 まず、養育費支払の始期と終期について問題となります。ただ、この点が争いの中心となることは少ないかもしれません。

 始期については、別居時とする考えもありますが(最判平成9年4月10日)、特段の事情のない限り、請求時とする見解が一般的です。すなわち、権利者が義務者に対し、内容証明郵便で請求したり、養育費支払の調停を申し立てたりしたその時からということです。これは、過去に養育費の不払いがあったとしても、予期せずに多額の養育費の支払を強いるのでは、養育費義務者に酷な結果を招くため、請求時からとすれば、それ以降は予測し得た範囲内であるとの考えに基づいてます。

 終期ついては、子が成人に達するまでとするのが原則ですが、両親共に大学卒等、その子も大学等の機関に進学する蓋然性が高ければ、通常の卒業年齢である満22歳に達するまでとすることもよくあります。ただ、留年や浪人までは、面倒見切れないとして、大学卒業時とすることは少なく、また、中退すればもちろんそこで打ち切るという条件が付加される場合が多いようです。

 次に、支払方法ですが、一月にいくらという定期金払いが普通でしょう。理論的には、子の終期までの養育費総額から中間利息を控除した額に相当する不動産等財産を譲渡するといった合意などもありえます。そして、一括払いを認めた審判もありますが(長崎家審昭和55年1月24日)、やはり珍しい例といえるでしょう。なお、養育費は、子供が生きていくためのものという重要性から、支払義務者が死亡した場合、他の誰かに負担して欲しいと考える場合もあるかもしれません。したがって、当事者間で合意があれば、養育費支払に連帯保証人を付けることも有効とされています。ただ、これも希有な例にすぎません。

 最後に、額の決定方法についてですが、最もよく用いられるのが、養育費算定表です。義務者と権利者の収入額を基礎として、養育される子の人数・年齢をも考慮の上、相当とされる算定額が示されています。これによれば、簡易迅速に相当額を決定できるので、とくに家事調停の現場などでは活躍しています。

 算定表以外では、算定式による場合があります。これは、子供が4人以上いたり、義務者と同居する他の要扶養者がいる場合などに利用されます。上記要扶養者には、未成熟子ばかりでなく、収入の少ない新たな配偶者も含まれます。どのような算定式を使用するかは、少々細かな話しになるので、ここでは割愛させていただきます。

 そして、忘れてはならないのが、当事者同士の合意による場合です。養育費を算定表や算定式で算出するのは、あくまで、両者の合意がない場合です。互いに月々の養育費をこの額にしようと決めたのに、それが算定表と違う額だから裁判所等から変えろなんていうのは大きなお世話というものです。協議離婚をして、その際、養育費を決めることも少なくありません。しかし、離婚協議書などで決めた養育費の額が、算定表からはずれていても、一旦決めた以上、早々文句など言えるものではないということは覚えておいてください。そんなことを許したら、協議離婚は、慰謝料、財産分与等様々な条件が絡み合って成立しているのに、一つが違う数字となると他にも影響を与えかねず、離婚の合意自体が崩されかねないからです。合意後に養育費を変えてくれという要求が叶いうるのは、合意後の事情変更が著しく、当事者の合意がその合意した基盤を失う場合に限られるのです。