皆様、こんにちは。

1 イントロ

 今回は法務省民事局が発表した「親子の面会交流を実現するための制度等に関する調査研究報告書」(以下「報告書」といいます。)について紹介いたします。

 同報告書では、民間の面会交流支援第(FPIC)の現状についての調査や面会交流当事者のアンケート、家庭裁判所での面会交流事件に関する取り組みや家裁調査官へのヒアリング等がまとめられており、かなりボリュームものになっています。

 そのため、まだ全てに目を通せていないのですが、興味深いと感じた点について取り上げていきたいと思います。今回は数字に着目してみます。

2 面会交流調停・審判の件数

 報告書によれば家事調停事件及び審判事件の件数は増加傾向にあります。

 例えば、平成10年(1998年)時点の面会交流調停事件(新受事件)は1696件であったのに対し、平成21年(2009年)には6924件まで増加しました。また、面会交流審判事件(新受事件)も平成10年は293件であったのに対し、平成21年には1048件と同じく4倍程度増加しました。

 その理由を一つに求めるのは難しいですが、ここ10年のうちに弁護士の広告が解禁されたことや弁護士数(ひいては事務所数)の増加によって一般の方にとって弁護士へのアクセスが比較的容易になったことが考えられます。すなわち、以前に比べて弁護士からアドバイスを受けたり、代理人として面会調停を申し立ててもらい易くなっているということです。

 元々夫婦関係調整調停の件数は平成8年(1996年)から5万件を超えて平成21年時点では57389件で推移しているので、かつてから夫婦間のトラブルはそれなりに発生しており、近年はお子さんの面会が次第にテーマとして顕在化し始めたという見方もできるかと思います。

3 面会交流の終局内容

 報告書では、面会交流調停や審判の結果どのような結論に至っているかについてもまとめられています。

 平成11年(1999年)では0~5歳までは月1回以上が54.2%、2,3カ月に1回以上が16.4%、4~6カ月に1回以上が7.9%、長期休暇中2.6%、別途協議12.5%でした。

 平成21年(2009年)になると、0~5歳までは月1回以上が58.4%、2,3カ月に1回以上が18.4%、4~6カ月に1回以上が4.6%、長期休暇中1.1%、別途協議7.4%でした。

 そもそも母数が異なりますし、「別途協議」の内容が不明ですが、月1回以上が半数以上を占める傾向が維持され、面会の間隔が比較的短いものが増えている傾向にあります。

 もっとも、お子さんの年齢が上がるにつれて面会の頻度は減少し、報告書でもお子さん自身の塾や課外活動などの活動範囲が広がることが一因ではないかと推測されています。

 例えば、中学生くらいになるとお子さんが部活動に入るようになり、それが土日も関係ないような活発な部活動ですと、面会の機会を見い出すのは相当に難しそうですね。面会交流はお子さんの健全な成長のために実施されるべき、との考え方が根強いので、親の希望でお子さんに無理を強いるのは難しいと思います。

4 審理期間及び回数

 報告書では終局までに要する審理期間や期日の平均回数もまとめています。

 面会交流事件は平成11年時点は5.5カ月(平均3.1回)に対し、平成21年時点では6.2カ月(平均3.7回)と増加傾向にあります。

 その原因について報告書は特に言及していませんが、私は母数の増加によるものと考えています。調停あるいは審判を申し立てるということは、夫婦が協議をして面会交流を行うことが何かしらの原因で困難な状態に陥っていると思われます。

 つまり、面会交流調停・審判の件数増加は、話し合いで折り合いが付けられなかったあるいはつけられそうもない夫婦が、面会の方針について裁判所で協議する件数が増えることを意味するのですから、早く終わった事件があったにしても全体としては紛糾しやすい、すなわち長引きやすくはなると思います。

 例えば、調停前に面会ができなかった、止まってしまったケースでは、裁判所から何らかの形で試行面接の実施を勧められることがあるので、何度か面会しているうちにあっという間に半年近く経ってしまうことはありえます。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。