離婚する際の財産分与において、特有財産は財産分与の対象にはならないと説明されることが多いと思います。なぜなら、財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦が相互の協力によって得た財産ですが、特有財産は、相続や贈与など夫婦の協力とは無関係に取得し、夫婦各自が所有する財産だからです。

 しかし、特有財産は必ず財産分与の対象にならないかというとそうではないようです。

 婚姻中に夫の父親が夫に借地権を贈与し、離婚の際にこの借地権が財産分与の対象となるかが問題となった裁判例では、

 「本件借地権は、控訴人(夫)が昭和43年9月父から無償で譲り受けたものであるから、その取得そのものに被控訴人(妻)の寄与、貢献があったとはいえないが、その維持のために被控訴人が寄与したことが明らかであり」

として、夫の特有財産である借地権について、その維持に妻の寄与を認め、財産分与の対象とすることを認めました(東京高裁昭和55年12月16日判決)。

 この裁判例からすると、例えば、妻が婚姻前に自宅を購入し、そのローンを婚姻中に夫が払い続けたような場合には、自宅の維持に夫の寄与が認められると思いますので、夫は自宅の財産分与を求めることができるのではなかと思います。

 ちなみに、寄与の程度の判断は、裁判所が、当事者が具体的に果たした役割などを考慮し、合理的な裁量によってなされるようです。上記の裁判例では、妻が夫に代わって、約1年間家業の経営をしていたこと、夫の要求に応じてバーのホステスとして働いていたこと等の事実を考慮し、借地権の価格の1割について妻の寄与を認めました。

弁護士 竹若暢彦