あなたは配偶者と共に生活してきた家を出て、別居を始めました。しかし、あなたは重大なことに気が付きます。「私がだいじにしていた●●を持ってくるのを忘れてた・・・。」

 このような場合、いったいどうすればよいでしょう? 婚姻中に買った高価なものですと財産分与の対象になりかねずややこしいことになるので、ここでは婚姻前に購入した物や財産的価値はあまりないがあなたが大切にしていたもの(衣類・書籍・趣味の道具など)に限定します。

 比較的穏便に離婚できるような場合には、(元)配偶者に連絡を取って取りに行かせてもらったり、小さなものであれば送ってもらったりして、スムーズに受け渡しが行えると思います。しかし、骨肉の争いになるような場合、そうホイホイと荷物を取りに行けるものではありません。(元)配偶者に送ってもらうなどもってのほかです。

 調停離婚や裁判離婚で双方に代理人がついている場合には、事件終了後にその双方の代理人が荷物のある家に行き、荷物の受け渡しに立ち会うことがあります。ですので、そのような場合には遠慮しないで頼んでいる弁護士に相談してみましょう。もっとも、何年も前の離婚事件の荷物の受け渡しなどは私も困りますので(笑)、あくまでもご依頼されているときか離婚成立直後にご相談ください。

 ご自身で離婚調停をされて代理人がいないような場合は、調停で荷物の引渡しを求める(離婚後の紛争調整調停)ことも可能です。裁判所のホームページhttp://www.courts.go.jp/saiban/syurui/kazi/kazi_07_20.htmlにも載っていますのでご参考まで。ご自身で申し立てるもよし、弁護士に依頼されるもよし、です。

 いずれにせよ欲しい荷物は具体的に指摘してくださいね。そうでないと、引渡しを請求された方も、何を渡したらいいのか分からなくなります。また、何か月間も(長い時には何年も)あなたが見ていなかった荷物ですので、(元)配偶者やその親族が片付けて無くしてしまっていたり、捨ててしまっていたりすることもあります。ですので、確実に引渡しができるとは思わない方が良いでしょう。

 ちなみに、私は、荷物の引渡しを離婚後の紛争調整調停で請求された側(元夫)の代理人になったことがあります。こういうものを引き渡してほしい、とリストを元奥さんが出してきたので見ると、項目が100以上(!)並んでいました。たしかに、これらは元奥さんが結婚の際に持ってきたもので間違いないそうなのですが・・・新品でも単価が数百円じゃないかというものがたくさんありまして、請求された側も少々うんざりしておりました。荷物引渡しの当日は、多少揉めながらも比較的スムーズにできたと思います。ちなみに、荷物引渡しをスムーズに終わらせるコツはどちらかが折れることです。この件も向こうが絶対に折れなさそうなので、「リストになくても要らないならあげちゃいなさい」、「そのタッパー、女性は喜ぶよ」とか言って(笑)、私が多少依頼者を説得して終わらせました。

 普段の業務では依頼者の不利になるようなことは言いませんが、離婚の荷物に関しては別です。本当に大切なもの以外は出てこなければ諦めて下さい。引き渡す側は、タッパーをおまけに付けるぐらいの気持ちで。そうでないと、本当に離婚の荷物の引渡しは大揉めに揉めるケースもあり・・・生産性のあるもめごとなら大いにやればよろしいと思うのですが、意地でも荷物を全部持っていこうとするとか、俺の給料で買ったものだから意地でも渡さない、などというのはどうかと思いますよ。安価な荷物はあきらめが肝心です。

弁護士 太田香清