離婚をする際に、当然親権者を決めますが、親権者とならなかった方の親は、子どもとの面接交渉(面会交流)を求めることが多いです。そのとき、親権者となった親がもう一方の親との面接交渉を拒んだら、もう一方の親は、面接交渉を自己の権利として請求することができるのでしょうか。反対に親権者となった親や子どもは、一方の親が面接交渉を求めたら、必ず面接交渉に応じなければならないのでしょうか。

 これは、面接交渉の法的性質の問題になります。面接交渉が、親権者となれなかった親だけの権利であれば、親権者となった親や子どもは面接交渉に応じなければならないということになりそうです。一方、面接交渉が、親権者となれなかった親の権利であるとともに子どもの権利でもあるとすると、その親と面接交渉させると子どもの福祉にかなわないような場合には、面接交渉を拒むことができることになりそうです。

 審判例も学説も親権者となれなかった親だけの権利とする立場もありますが、最近では、面接交渉は親と子どもの両方の権利であるとする立場が多くなっているようです。例えば、大阪家裁平成5年12月22日審判は以下のように判断して、面接交渉が子どもの権利でもあるとしました。

 「いかなる子どもも、個人として尊重され、平和的文化国家の有用な構成員として、人格の完成をめざし、心身の健全な発達を求める基本的人権が保障されねばならない(憲法第26条、教育基本法第1条)。すなわち、子は民法上親の権利の客体である以前に、憲法上の権利主体であることが看過されてはならないのである。
 このような精神に照らせば、面接交渉権の性質は、子の監護義務を全うするために親に認められる権利である側面を有する一方、人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求めるこの権利としての性質をも有するものというべきである。」

 そうすると、親権者となった親や子どもは、子どもの福祉にかなわない場合には、面接交渉を拒むことができそうです。

 ちなみに、上記の審判例では、一方の親に面接交渉は認められなかったのですが、親が子どもに手紙や写真を送ったりして、子どもに対してきめ細かい配慮をすることが望ましいと言っています。おそらく、面接交渉が認められない間でも、このようなことをしていれば、今後、改めて面接交渉を求めるときに有利な事情となるということを示唆しているように思われます。

弁護士 竹若暢彦