前回に引き続き、審判前の保全処分を見ていきます。

 保全処分の審査手続については特に規定が設けられておらず、本案審判と同様の手続で行われます。

 ただ、保全処分の審判は、疎明に基づいてするものとされています(家事審判法第15条の3第3項)。

 家事審判においては、家庭裁判所は職権での事実調査と証拠調を行いますが(家事審判規則第7条1項)、保全処分においてはその手続の緊急性から、申立人が保全処分を求める事由を疎明しなければならず(家事審判規則第15条の2第2項)、 家庭裁判所の職権探知は必要があると認められる時のみに限定されます(同条第3項)。

 疎明は即時に取り調べることのできる証拠によって行うこととなります(家事審判法7条、非訟事件手続法10条、民事訴訟法188条)。

 審判前の保全処分については、民事保全法第4条、第14条が準用されるため、担保を立てなければならない可能性があります。

 もっとも、保全処分の種類によっては規定上担保が不要の場合がありますし(家事審判規則第23条1項・財産の管理者の選任及び指示の処分)、婚姻費用・養育費の仮払いや子または子の生活用品の引き渡しの仮処分などでは、個別の判断で担保を低額とする運用がなされることもあるようです。

 審判前の保全処分の申立てが手続要件を充足しているなら、保全処分の裁判が行われることとなります。

 保全処分を求める事由を申立人が疎明できたなら、申立は認容され保全処分の審判がなされます。
 保全処分を求める事由を申立人が疎明できなければ、申立却下の審判がなされます。