夫婦の間で婚姻関係が破綻していると認められるか否かは、様々な場面において問題となります。
例えば、離婚が争われている場合、不貞行為、強度の精神病といった明確な離婚事由がないときなど、婚姻関係の破綻の有無が結論を左右することになります。
また、不倫関係になった場合、性交渉があった当時、婚姻関係が破綻していたか否かで、不倫当事者に不法行為性が認められるかが分かれてきます。
そこで、今回は、婚姻関係の破綻にまつわるお話しをしてみます。
まず、夫婦間の出来事は、犬も食わない程、当事者以外の誰も知らないことが多いかもしれません。となると、その二人の関係が円満なのか、倦怠期なのか、破綻しているのか等もなかなか外部からはわかりにくく、その状況の立証は簡単ではありません。
そこで、一つの目安として、夫婦が別居しているか否かが重要な考慮要素となってきます。夫婦が別居した後に、第三者の異性と知り合い、男女の関係に進んだといった場合、比較的、婚姻関係破綻後の交際であるから、不貞、不法行為とならないとの抗弁が現実味を帯びてきます。逆に言うと、不貞慰謝料請求の事案では決まって、婚姻関係は破綻していたとの抗弁が出されますが、離婚届を書いていた、離婚調停をしていたといった客観的証拠がない限り、殆ど相手にされません。
もっとも、別居期間の長さは、各場面で要求されるレベルに相違がみられます。
上述した不貞相手に対する慰謝料請求のような場合には、別居直後の出会いでも、別居後というそれだけで、破綻の抗弁の効力に重大な差が生じます。
これに対し、離婚原因の有無を争う夫婦間では、別居したというだけでは、婚姻関係の破綻による「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)には当たりません。裁判例をみると、3年程度の別居期間が破綻といえるかのボーダーになっているように思います。平成8年の民法改正案では、5年以上の別居を婚姻関係の破綻に結び付ける考えが提案されていました。
また、不貞を働いた有責配偶者からの離婚請求に関する場合、最低でも8年間の別居期間のあることが、離婚を容認する限界線となっているようです。
このように婚姻関係の破綻を何か客観的証拠で根拠付けたい場合、別居の事実は立証が容易で有力な材料となるのですが、使用する場面場面で必要となる期間の長さが異なってくることには注意が必要です。