親が子供の扶養義務を負うのはいつまでなのでしょうか。

 まず、民法877条は、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定めています。ここで定められている親の子に対する扶養義務は、親子という身分関係に基づいて発生するものですので、離婚後であっても、父母は未成熟子に対して扶養義務を負います。

 そして、扶養義務の対象となる未成熟子とは、身体的・精神的・経済的に成熟化の過程にあり、就労が期待できず、第三者による扶養を受ける必要がある子を指しています。これは本来未成年者とは別の概念ですが、実務的には、扶養義務の終期について、原則として成人になるまでとされることが多いようです。

 では、子が短大や大学に進学して、年齢的には成人だけれども、学生だから働けない、という場合はどう考えるべきでしょうか。この場合は、一般的には就労が期待できないわけですから、まだ要扶養状態にあることになります。

 判例によれば、両親の資力、学歴など家庭環境を考慮して、その環境で大学進学が通常のことと考えられる場合には、大学卒業時までの扶養義務を認めています。たとえば、父親が医者で母親が薬剤師という家庭で、第一子が薬科大学に進学している場合に、その卒業時の年齢までの扶養義務を認めた事例があります(大阪高決H2.8.7)。

 ところで、大学生といっても、勉強中心の生活を送りお金のことは全部親に頼っている人もいれば、学費や下宿費はアルバイトや奨学金を利用して自分で賄うという人もいますので、成人に達した大学生の要扶養状態については個別の事情で判断すべきということになります。

 この点について、両親が離婚後、私立大学に進学した子が、奨学金やアルバイトなしに勉学中心の学生生活を過ごしておいて学費・生活費を全て母が負担していることから、父に対して大学卒業までの授業料と月9万円の生活費の支払いを求めた事案をご紹介します。原審では、成人に達した普通の健康体である者には潜在的稼働能力が備わっているため、当該子は要扶養状態にないと判断しましたが、抗告審ではこれを取り消しました。

 その理由は、子が大学の学業を続けるため、学費、生活費に不足を生じた場合には、その不足する額、不足するにいたった経緯、受けることができる奨学金の種類、支給時期、方法等、アルバイトによる収入の有無・見込み・金額、奨学団体以外から学費の貸与を受ける可能性の有無、親の資力、親の大学進学に関する意向等、当該子の学業継続に関連する諸般の事情を考慮した上で扶養義務の要否を論ずるべきであるということです(東京高決H12.12.5)。

 大学進学したかどうかが就職にも大きく影響する昨今、親の離婚という自分でどうにもできない状況により大学中退せざるを得ないような事態を避けるために、妥当な判断であろうと思います。

弁護士 堀真知子