Q.
交際して10年、結婚前提で同棲(歴は3年)している彼女がいました。双方の両親に顔合わせを済ませ、具体的な結婚へ向けての準備を進めているところでした。ところが一方的に別れを告げられ、彼女が出ていってしまいました。友人は勿論、上司や同僚にも報告していましたので、いい恥さらしです。婚約破棄に対して慰謝料請求って出来るのでしょうか?
A.
婚約破棄に対する慰謝料請求自体は可能ですが、認められるかは事案によります。
ポイントになるのは①婚約が成立していたか否か、②婚約破棄に正当な事由があるか、③婚約破棄によりどの程度の損害(精神的苦痛)を被ったか、になるでしょう。

 将来結婚しようと約束したにもかかわらず、突然その約束を破棄される。破棄された側としては、極めて辛いことだと思います。
 では、婚約を破棄されたことで慰謝料の請求ができるでしょうか。

 婚約したといっても、二人はまだ結婚したわけではなく、法的な婚姻関係が成立した訳ではありません。
 本日は、婚約破棄について考えていきましょう。

1.婚約の成否について

 まず、婚約を破棄したことを理由に慰謝料の請求をするのですから、前提としてこの男女が「婚約した」といえるのかが問題となります。

 「婚約」とは、読んで字のごとく、「結婚の約束」であり、「将来結婚をする旨の合意」を指します。
 そして、この合意とは、当事者(婚姻した男女)の間のみで成立するものであり、単に当事者間で将来結婚し、夫婦として生活する旨の約束をすれば足りるものなのです。
*厳密には、合意が真摯なものである必要がありますが、詳しくは割愛します。

 但し、結婚の合意をすれば足りるといっても、単なる口約束だけでは、本当に婚約が成立したか第三者には分かりません。特に、裁判等で争った場合、相手が「結婚の約束をした覚えはない」と主張してきたら、裁判官はどちらが正しいのか容易には判断できないでしょう。
 そのため、実際は合意以外の事情が鍵になることが多いです。
 例えば、婚約した場合、両親への紹介、エンゲージリング、結納の儀、同棲、結婚式場の予約といった様々なイベントをこなす人も多いでしょう。こういった事情が多いと、婚約が成立していると判断されやすくなります。反対に、これらの事情が少ないか、全く無い場合、婚約の成立が認められにくくなる傾向にあります。

 本件の場合、既に10年交際し、結婚前提の同棲期間は3年にも及んでいること、双方の両親に顔合わせをしたこと、友人、上司、同僚にも結婚の報告をしていること、結婚式に向けた準備(準備の内容にもよります)もしていることを踏まえると、婚約が成立していると認められやすいと考えられます。

2.婚約破棄の正当事由

 次に、婚約が成立していたとしても、全ての婚約破棄に対して慰謝料請求ができる訳ではありません。
 相手側に婚約を破棄しなければならないほどの正当な事由がある場合は、慰謝料を請求することは出来ません。

 何をもって「正当事由」と認められるかは、ケースバイケースと言わざるを得ないのですが、婚約成立までの過程や、婚約破棄に至るまでの各事情を総合考慮して判断することになります。
 正当事由と認められる典型例としては、

・異性関係(破棄された側が浮気をしていた等)
・DVやモラハラ
・重要なことにつき嘘をついて婚約した(代表的なものに、収入や職業等があります。)
・重度の病気や怪我

 があります。

 反対に、

・愛情が冷めた
・親に反対された

 等の理由では、正当事由としては不十分とされる可能性があります。

 本件の場合も、男性側に婚約を破棄せざるを得ないような問題があった場合、慰謝料の請求ができない可能性があります。

3.慰謝料の相場について

 慰謝料とは、精神的苦痛を慰謝するための金銭であり、その額は、婚約破棄によってどの程度の精神的苦痛を被ったと認められるかで変わってきます。
 その額は、事案によって様々ではありますが、私の感覚では、概ね30万円~多くても200万円程度ではないかと思います。(もちろん、これ以上の金額を認めた裁判例もあります)。  婚約破棄を理由とする慰謝料は、全体として低めの傾向にあり、本件の場合も、特別な事情が無い限りは数十万円~100万円程度に留まる可能性が高いでしょう。

 なお、本件では慰謝料の請求が問題となっていますが、婚約破棄による損害は、慰謝料だけとは限りません。
 例えば、結婚式場を予約した後のキャンセル費用、婚約を機に引っ越しをした場合の引越費用や、転居費用等、婚約破棄によって生じた損失といえるものについては、損害賠償を請求することができる可能性があります。

4.婚約破棄トラブルに対する対応について

 婚約を一方的に破棄された場合、相手の都合で深く傷つけられたのですから、慰謝料を求めたくなるのは当然でしょう。
 しかし、実際に慰謝料を請求するとしても、そもそもの婚約の成否から正当事由の有無、慰謝料の金額等、考えなければならないことがたくさんあります。
 また、婚約を破棄してきた相手と直接慰謝料の交渉をすることは、非常にストレスがかかることだと思います。相手に心無いことを言われ、更に傷つく可能性もあるかもしれません。
 この点、弁護士であれば、慰謝料請求の可否や金額について専門的な知識を有していますし、相手方との交渉を全て本人に代わって行うことができますので、交渉のストレスからも解放されることができます。

 婚約を破棄され、慰謝料等の請求をしたい方、まずは、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょう。