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離婚後、現在の自宅に住み続けることは不可能ではありません
とはいえ、そのためには念入りな話し合いが必要となります。

妻と子どもが住み続けるために、最も問題が少ない方法は?

 ご相談のケースは、妻は専業主婦、夫が外で働いて給与を得るという状況であったと思われますが、この場合、夫の収入も夫婦で協力して稼いだものとの観点から、原則として夫婦の収入と考えられます。そして、夫婦の収入で買った家もまた、夫婦共有財産と考えられます。
 したがって、離婚に伴う財産分与として、自宅の名義を妻にするという方法は理論的には可能です。ただし、この場合には、離婚後のローンは被分与者(相談例では妻)が本来負担しなければなりません。

 とはいえ、住宅ローンはその前提として、融資を受ける名義人が居住することが条件となっていることが通常です。財産分与を受けた者に十分な収入があり、ローンの借り換えが可能であれば問題は少ないのですが、ご相談例のように妻に収入がないか少ない場合、通常借り換えは不可能ですので、この点で問題が生じます。

 他方、夫にローンを負担してもらいつつ、居住も認めてもらい、完済後に財産分与を理由に名義変更をするという合意もあり得ますが、夫婦の間に住宅くらいしかめぼしい財産がない場合、過大な財産分与として贈与税の対象とされる可能性もあります。

 ご相談例では、ローンがまだ30年残っているということですので、通常は残ローンを住宅の価値が下回っているいわゆるオーバーローンの状態と考えられますが、このような場合には、その住宅はマイナスの財産として財産分与の対象と扱わない取り扱いが通常です。そこで、財産分与による名義変更は行わず、ローンの支払も名義人である夫のままとして、離婚の際に賃貸借契約等を結ぶなどして、妻と子供たちの居住権を認めてもらうという処理が最も問題が少ないのではないでしょうか。

 なお無償の居住とする方法もあり得ますが、この場合、他方で夫から受ける養育費について、住居費相当分が控除される可能性もありますので、その額相当分を賃料とし、養育費とあわせて全体で夫から受ける利益について合意するという解決方法もあり得ます。
 もっとも、この場合でも、夫がローンの支払いを止めてしまい、銀行等に抵当権を実行されると、仮に賃貸借契約を結んでいても住み続けることはできなくなります。ですから、夫がローンの支払いを滞らせないようにする条項も、合意に入れておく必要があるでしょう。
 ただし、当該自宅購入の際に、妻の実家からの援助を受けている場合などにはさらに異なる解決方法が考えられるかもしれません。

 いずれにしても、ローンの残っている住宅の取扱いは、離婚の際に難しい論点となり得るところですので、そのような事態に直面された方は、弁護士法人ALG&Associatesまでご相談ください。