① 監護の継続性の原則
子供の養育者を変更すると心理的に不安定になる危険性があるため、子に対するネグレクト等の事情がない限り、現実の監護者を優先させるという考え方です。
この考え方は実務的には極めて重要です。なぜなら、親権者を決定する際には調査官が家庭訪問等をして作成する調査報告書が決定的に重要な資料になりますが、監護親側が良好な家庭環境と親子関係を築いていた場合には子供の養育者を変更するべきという内容の調査報告書は作成されにくいからです。
ただし、単純な実力による子の奪い合いの現状追認にならないようにするために、子供を単独で監護するに至った経緯も重視されており、違法な子の連れ去りが行われた場合には親権者としての適格性を欠くとされるケースが多いです。
② 乳幼児母性優先の原則
子供の年齢が小さい場合には母性的な役割を果たす者の監護と愛情が特に重要であるため母性的な役割を果たす者を親権者にするべきであるという考え方です。
裁判例では「年少者」には「母親のきめ細かな養育監護の継続が特に必要とされる」(仙台高決平成15年2月27日家月55巻10号78頁)と判示されています。
この裁判例の文言からも、単に性別が女性であることが重視されているというよりも、母性的な「きめ細やかな養育監護」の実績が重視されていると考えられます。
最近では共働きの夫婦が増加しており、育児に積極的に参加する男性も増えてきていますが、男性が主に母性的な監護を担当している場合には親権者になる可能性は十分にあります。
③ 子の意思尊重の原則
子供自身の意思を尊重して親権者を定めるべきであるという考え方です。
子供が概ね10歳以上である場合には子供の意向が尊重されます。ただし、未成年の子の意向は変動しやすく、身近にいる者の影響を受けやすい上、言動と真意が一致しない場合もあるため、子供の発達段階に応じた評価をするべきであると考えられております。
子供が10才未満の場合でも、子供にとっての親の好き嫌いがはっきりしている場合には、調査官が家庭や通学先を訪問して調査報告書を作成する際に事実上大きな影響を与えることもあり得るため、親権の獲得を目指す者としては子供の意向を軽視するべきではありません。
④ 寛容性の原則
離婚後に非監護親と交流できる方が子の福祉に適うため、相手(非監護親)に対して寛容であり面会交流に協力する親を親権者にするべきであるという考え方です。
年間100日間もの面会交流の計画を提示した事実等を考慮して非監護親を親権者にした裁判例によって最近注目を集めている考え方です。現在の実務上も将来の面会交流の予定は親権の考慮要素とされています。
ただし、単に長期間の面会交流を申し入れただけでは、子供の幸せが確保される訳ではないため、親権者とされる可能性が高いとは言えません。