2.具体的検討

⑴ 当該住宅に婚姻費用分担義務者(以下では単に「義務者」といいます)が住む場合

義務者が住宅ローンを支払っている場合

 婚姻費用分担額決定にあたって、ローンの支払いを考慮しないのが通常です。原則通りということです。
 仮に、住宅の名義が夫婦のどちらかの単独名義あるいは夫婦共有となっていても、その点は離婚の際に財産分与で考慮されるべきことであるとされ、婚姻費用分担には影響しません。

婚姻費用払受権利者(以下では単に「権利者」といいます。)が住宅ローンを支払っている場合

 婚姻費用を算定する際には、義務者及び権利者の双方それぞれについて、必要となる住居費が予め計算され、算定の基礎で考慮されています。ところが、1-⑵の場合には、義務者は、婚姻費用算定にあたって収入から住居費用相当額を控除されているにもかかわらず、実際には住居の確保に必要な費用を支出していないばかりか、これを権利者に負担させている関係にあります。そうすると、この分を権利者のために勘案してあげないと、権利者に不公平な結論となります。
 したがって、婚姻費用増額の理由となり得ます。

双方が住宅ローンを支払っている場合

 この場合はさらに細かな考慮が必要となりますのでケース・バイ・ケースということになるでしょう。ちなみに、大阪高決平成21年10月7日は、考慮不要と判断しています。