3.嫁姑バトルと離婚原因

 協議離婚、調停離婚が成立せず、それでも離婚したい場合、離婚訴訟を提起することになります。
 そして、請求が認められるためには、離婚原因がなければいけません。そこで、嫁姑の不仲が「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるかが問題となります。
 本来離婚は夫婦の合意によってなされるものであるところ、離婚訴訟の場合、夫婦の意思にかかわらず裁判所が一方的に離婚を決めることになりますので、単に嫁姑間が不仲であるだけでは足りず、それによって婚姻関係が破綻し夫婦の共同生活の回復の見込みがないとまでいえなければなりません。
 以下で過去の裁判所の判断を取り上げます。

①婚姻関係の破綻を認めた例(裁判例①)

 名古屋地裁岡崎支部昭和43年1月29日判決は、夫の両親と妻とが不和となり、妻が離婚を請求した事案について、婚姻関係が円満ではなくなった原因は、夫の両親と妻との不和であるが、夫はその不和について無関心で、家庭内の円満を取り戻す努力をしないばかりか、婚姻関係を維持する意思すらないと認められることから、婚姻関係を継続し難い重大な事由があると判断しました。

②婚姻関係の破綻を認めなかった例(裁判例②)

 名古屋高裁平成20年4月8日判決は、妻が夫の母の言動によってうつ病となり、夫と別居状態となっていたことから、夫が離婚を請求した事案です。
 裁判所は、別居状態が約3年3か月間続いており、婚姻関係は破綻に瀕しているといえるが、別居前は妻は夫に対しては大きな不満はなく円満な婚姻関係を営んでいたこと、妻は婚姻関係の修復に強い意欲を示しうつ病の治療を続けていること、妻のうつ病が治癒し、あるいはその病状についての夫の理解が深まれば婚姻関係の改善も期待できることから、いまだ婚姻関係は破綻していないと判断しました。