こんにちは。今日は、別居中の夫婦の婚姻費用分担の諸問題の中で、特に夫婦間の子供に関するお話をしようと思います。
婚姻費用は、夫婦と未成熟子を中心とする婚姻家族がその財産、収入、社会的地位に応じて通常の生活を保持するために必要な費用のことをいいます。夫婦は別居した場合でも互いに協力し扶助しなければならないため、義務者は自己の生活を保持するのと同程度の生活を権利者に保持させる義務があると考えられています。
さて、そうであるとして、婚姻費用の算定を巡っては様々な実務上の問題があります。
例えば、別居時に20歳の大学生の子供がいた場合、この子供の分も婚姻費用を払ってくださいと請求されることがあります。「20歳にもなってもう成人なんだから、扶養義務はないんじゃないか?」と言われることもあります。
未成熟子とは何歳までの子と考えるべきでしょうか?成年に達している子の生活費まで負担する義務はなさそうに思いませんか?
裁判例では、未成熟子とは自己の資産又は労力で生活ができる能力の無い者をいうとされています。原則として成年に達した子は未成熟子ではありませんが、成年に達していても自分で生活費を得ることが出来ない子は未成熟子と扱うことになるのです。最近の大学進学率の高さからすれば、親に経済的余裕があり子の大学進学を承諾している場合には大学生も未成熟子と認めることができるのです。
また、例えば別居中の夫にこどもの学習塾や習い事の授業料も払ってよと当然に言えるのでしょうか?塾や習い事に行かせることに反対している夫に対しても、当然の権利として請求できるのでしょうか?
学習塾や習い事は、通常の学校教育とは別にあくまで任意に行う私的な学習です。未成熟子を現に監護している親が通常の婚姻費用の範囲内でその責任において、学習塾や習い事をさせるべきなので義務者に負担を求めることは出来ないと考えられます。もっとも、未成熟子が受験期で学習塾に通う必要性が高い場合等には、当事者の経済状況などを勘案して社会通念上相当と認められる範囲で義務者に分担させることは出来ると考えられます。
20歳を超えた子に対する婚姻費用も、子どもの学習塾等の費用も、義務者に対して当然に請求できるものではないということは念頭に置いてもらいたいです。その上で、お互いの生活状況等をみながら話し合いの中で決めていってほしいと思います。