本日は、ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」といいます。)について取り上げたいと思います。
夫婦間において暴力がある場合、真っ先に適用の可否を考えるのは、DV防止法と言われる法律ですが、ストーカー規制法は夫婦間のみならず、広く恋愛感情を有している者同士あるいは一方的に恋愛感情を持っている者に適用があります。
また、ストーカー防止法は警察による警告等の行政手続や罰則等の刑事手続を定めたもので、当事者同士の民事上の手続を定めたDV防止法とは適用範囲が異なります。
それでは、以下、ストーカー規制法について述べていきます。
1 規制される行為(2条)
ストーカー規制法は、以下の(1)、(2)の行為を規制しています。
(1)つきまとい等
ア 主観的要件
「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」をもって以下の行為を行うことを必要としています。
イ 8つの行為類型
① つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
② その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
③ 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
④ 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
⑤ 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。
⑥ 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
⑦ その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
⑧ その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと。
(2)ストーカー行為
つきまとい等が反復して行われる場合(上記①~④の行為については、身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復して行われる場合をいいます。
2 警察による対応
(1)警告(4条)
被害者の申出に応じて行われるもので、「つきまとい等」を繰り返している行為者に対し、それをやめるように警告するものです。
(2)禁止命令等(5条)
警告に従わない者に対して、被害者の申出又は職権で行為者に対して命じることのできるものです。
(3)援助(7条)
パトロールの強化等を行ってもらえます。以前筆者の事件では1年間パトロールの強化をしてもらいました。
また、被害防止措置の教示、被害防止交渉に必要な事項の連絡、行為者の氏名及び連絡先の教示、被害防止交渉に関する助言、民間組織の紹介、警察施設の利用、防犯ブザー等の被害防止物品の教示又は貸出、警告を実施した旨の書面の交付等があります。
3 罰則(13条~15条)
ストーカー行為に対しては、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることになります。
警察からの禁止命令に違反してストーカー行為をした者に対しては、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されることになります。
4 対策
(1)証拠収集
ストーカーによる被害については、ストーカー規制法上、警察との連携を図るためにも、民事上の損害賠償請求をするためにも、出来る限り客観的な証拠を残しておくことが必要です。
まずは、つきまとい、待ち伏せ、押しかけ等の身体に対するつきまとい等については、被害を受けたときに、すぐに110番し、警察の内部に記録を残していくことが重要です。
元恋人などの知り合いからの付きまとい等については、電話や電子メールを利用したものが多いですから、電話の着信時間、通話内容を記録して、録音機能があれば、会話を録音することが有効です。
電子メールについては、携帯電話が突然壊れることもありますので、他の媒体に保存するか、そのメールを表示した画面を、写真に撮影するなどして、保存しましょう。
LINEについては、一括送信機能がありますので、それで別の媒体に保存することができます。
知らない人からのストーカー行為に悩んでいる場合には、被害を受けた日時、場所と、ストーカーの身体の特徴、服装や車を使っていた場合には車の車種や色等について、できる限り具体的にメモを作成しておく必要があります。
(2)警察への申出及び弁護士の介入
前述した証拠によって「つきまとい等」が明らかな者に対しては、警察による警告を求める旨の申出をします。その際、本人が不安を感じていれば、弁護士が付き添います。
「つきまとい等」を行っている者は、「自分は相手を愛している」と思っているので、自己がストーカーであると認識していないことが多く、「つきまとい等」をされている者は、その場の雰囲気に流されてしまう人が多く、本当はこれ以上相手と一緒にいたくないと思っていても、相手方に優しくされるとつい相手方の言うことを受容してしまうことが多いです。
このような2人の片方が「つきまとい等」の行為を行い始めると、ほとんどのケースで第三者が介入するまで「つきまとい等」の行為は止むことがありません。
被害を受けたと感じた人は、必ず第三者に相談しましょう。そのような方から相談を受けた方も、警察に行くか弁護士に相談するかというアドバイスをしてあげましょう。
筆者が担当した事案では、弁護士名義の内容証明で警告したところ、付きまとい等の行為は止んだというものもあります。
5 まとめ
どちらにせよ、ストーカー対策で一番大事なことは、1人で悩まずに、早期に第三者を介入させて手を打つことだと言われていますので、少しでも悩まれている方は弁護士法人ALGまで、ご相談お待ちしております。