皆様、こんにちは。

1 イントロ

 お茶の間向けのテレビ番組等で嫁と姑の不仲などがよく取り沙汰されます。それでは、夫婦間の不仲ではなく、親族間との不仲が離婚原因につながることがあるのでしょうか?

2 事案の紹介(否定例)

 少し古い事案ですが、構図としては強い発言権を持つ夫の母親と妻が衝突したケースです。

 夫婦は夫の実兄からアパートを借りて暮らしていたところ、姑から「他人ならば賃料をもらえるのに損をしてる」という趣旨の発言をされたことから嫁姑の関係が悪化し始めました。嫁も黙ってはおらず、夫の安月給に対して文句を付けるようになり、姑に対しても罵っていたようです。

 他にも、嫁が姑から頼まれていた仕事を手伝ったのに何も労いの言葉をかけないで無視するような態度を取ったことから、嫁が激怒して姑に殴る蹴るの暴行を振るったりもしました。夫は姑(実母)に絶対服従の態度を取り、むしろ姑に対して攻撃的に対立する嫁の存在を疎ましく思うようになっていきました。

 結局、このような夫婦関係に耐えきれなくなった夫が訴訟を提起しましたが、第一審でも控訴審でも棄却されました(控訴審は東京高裁昭和56年12月17日判決)。控訴審では、対立の原因は姑にあるけれども、嫁との人間関係の不和は夫の努力によって解消できる可能性が充分にあったと判断されています。大した努力もせずに嫁を非難、嫌悪ばかりして夫婦関係を一方的に清算しようというのは身勝手である、というような締めくくりがされており、婚姻関係の回復が完全に不可能かどうかを見極められるだけの事実がないと手厳しい判断となるようです。

3 肯定された事例

 肯定されたのはさらに古い事例です。

 やはり、嫁姑間の対立が原因となっていました。姑が農作業ができない嫁をけなしていたようですが、嫁がその不満を日記にぶつけていることが夫の両親に露見して、一気に関係が悪化しました。その後も、嫁が姑の期限を損ねる事態が度々起こり、姑が仲人に対して嫁を生家へ引き取って欲しいと申し入れるまでになりました。

 本件では妻が離婚を求めて訴訟提起をした結果、裁判所は家庭内の不和葛藤が頂点に達した状況において、夫が嫁姑の対立に全く無関心であり、努力する気配が全くないことからすると、婚姻関係の回復を図って維持できるようにすることは困難であるとの判断の下、離婚を認めました(名古屋地裁昭和43年1月29日判決)。

 否定された例と夫のスタンスはあまり変わらないと思われます。ただし、請求したのが嫁(妻)という点で、否定例のように虫のいい話を求めているわけではないことが結論を異にした原因ではないかと思われます。

 また、請求自体は否定された例ですが、婚姻関係の破綻を認定された例があります。これも姑が嫁に対して悪口を言うようになり、嫁も夫に対して姑の文句を言うようになって関係が悪化し始めました。夫はどっちつかずの態度を取りながら、やがて姑との別居を試みますが、結局、母親である姑の下へ帰るようになり、10年間の別居状態となってしまいました。訴訟そのものは夫が提起したところ、裁判所は妻とのと婚姻関係は破綻しているものの、夫は姑にべったりの関係になって妻を置きざりしてしまう結果となったことから夫は有責配偶者であると認定され、離婚は認められませんでした(東京高裁平成元年5月11日判決)。

4 最後に

 各裁判例に共通してみられるのは、事実を詳細に見ているという点です。

 本記事では裁判所が認定した事実を全て紹介することは叶いませんが、見る限り、嫁姑間が不仲に陥った、不仲を促進させたエピソードを極力取り上げようとしている様子でした。

 その中で、誰が最も大きな不仲の原因になっているかを考えるというよりは、姑が不仲の原因に関わっていることを前提に婚姻関係の修復が見込めるか否かを判断しています。つまり特別な判断枠組みを用いているわけではないのです。

 不仲の原因、内容、お互いの言動や同居の有無など対立の状況について把握することは重要ですが、他にも他方配偶者の性格や態度、不和の解消に向けた努力がなされたか否か等、三者間の関係をそれぞれ詳しく整理することが必要となるでしょう。

 未婚者の私には、嫁姑の対立がいかなるものか想像もつかないところですが、特に同居する場合には相当の覚悟が必要なのでしょうね。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。