A.
あなたが怪我をしたことについては、酔っ払いに対して損害賠償請求できますが、賠償額は少額になる可能性があります。
あなたが酔っ払いの損害賠償請求に応じる必要はありません。あなたに不法行為に基づく損害賠償責任はないからです。

相手側に責任はないの?

 まず、酔っ払いの責任について考えますね。酔っ払いが絡んであなたを怪我させた行為は、「不法行為」に該当します。

 不法行為というのは、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害する行為です(民法709条)。このケースで、酔っ払いがあなたに絡んできたというのは、少なくとも過失のある行為だと思われます。そして、その結果としてあなたは怪我をしていますから、人の身体の安全という法律上保護される利益が侵害されています。したがって、酔っ払いの行為は不法行為に該当します。

 不法行為に該当する場合、損害賠償責任が生じます(民法709条)。治療費や精神的苦痛が賠償の対象となる損害となりえます。
 あなたの怪我は、かすり傷程度ということですから、治療といっても消毒と絆創膏程度で済んだのではないかと思いますので、治療にかかった実費は少額です。また、酔っ払いが絡んで攻撃してきたこと自体で精神的苦痛が生じているかもしれませんが、この程度の怪我であれば、精神的苦痛もそれほど大きなものではないと推測されます。したがって、損害賠償額は少額になるのではないかと思われます。

攻撃をかわした場合、怪我の責任を負うべき?

 次に、あなたの責任について考えます。

 あなたは攻撃をかわしたということで、自分から攻撃をしかけていないのですよね。そうだとすれば、「侵害する行為」(民法709条)がないので、不法行為はありません。したがって、あなたが酔っ払いに対して損害賠償をする必要はありません。

 仮にあなたが勢い余って相手方に手出しして、その結果、酔っ払いが怪我をしたら、不法行為は成立しえます。しかし、あなたの攻撃が防衛のためにやむを得ない程度のものであれば、正当防衛が成立する可能性はあり、損害賠償責任を負いません(民法720条1項)。

 いずれにしても、あなたは酔っ払いに対して損害賠償責任を負いません。請求をお断りして結構です。