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原則:満室の場合、もはやホテルに宿泊させるように請求をすることができなくなります。もっとも、ホテル側の責めに帰すべき事由(予約の取り違え等)がある場合には、ホテル側に対し、ホテルに泊まれなかったことにより生じた損害(別のホテルの宿泊代等)の賠償を請求することができます。

例外:ホテルの約款に、このような場合にはホテル側の責任を一部免除する旨の記載がある場合、ホテル側に責任の一部を問えない可能性があります。

原則として賠償請求、もしくは代金の返還請求が可能

 ネットでホテルを予約したことにより、契約が成立し、ホテル側には、予約者を宿泊させる債務が発生します。しかしながら、満室になった時点で、社会通念上履行が不能になったものとして、ホテル側の宿泊させる債務そのものは消滅し、ホテル側に対し宿泊させるよう求めることはできなくなります。もっとも、ホテル側の責めに帰すべき事由がある場合には、ホテル側は債務不履行責任を負うため、別のホテルの宿泊代金等の損害について賠償請求をすることができます(民法415条)。

 ホテル側に債務不履行責任を問えない場合、代金債務は危険負担により消滅し(民法536条1項)、代金を支払う必要はなくなります。この場合、代金を支払ってしまっても、支払い代金相当額を不当利得として返還請求することができます(民法704条)。

例外として責任の一部を問えない可能性も

 ホテルの約款に、このような場合の責任の全部あるいは一部を免除する旨の記載があることがあります。もっとも、①責任の全部の免除、及び、②ホテル側に故意または重過失ある場合の責任の一部の免除は、消費者契約法8条1項1号及び同条項2号により、無効です。したがって、ホテル側に故意または重過失がない場合において、責任の一部を免除する旨の記載がある場合には、その限度でホテル側は責任を免れることになります。