「枝」と「根」で対応できる方法が違う

 民法は、隣地の植栽の「枝」が越境してきた場合と「根」が越境してきた場合を分けて規定しています。越境してきているのが植栽の「根」であれば、越境されている側の土地の所有者はその根を「切りとることができる」と定められています(民法233条2項)。

 これに対して、「枝」が越境してきている場合は、越境されている側の土地の所有者は、植栽の所有者にその枝を「切除させることができる」にとどまります(民法233条1項)。根が越境してきた場合と異なり、越境されている側の土地の所有者に枝を切除する権限は規定されていないため、植栽の所有者が剪定の要求に任意で応じてくれるか否かが問題解決の大きなポイントになります。

 植栽の所有者が剪定の要求に応じてくれない場合、越境されている側の土地の所有者は、植栽の所有者に対して、強制的に切除を求めて、越境している枝の切除を請求する訴訟を提起し、その訴訟において勝訴判決を得たうえで、当該勝訴判決に基づいて強制執行を行うという方法を採らなければならなくなります。そのため、植栽が存在する隣地が長年放置されているような土地であるような場合には、植栽所有者が剪定の要求に任意に応じてくれず、訴訟提起から強制執行を完了するまでに長時間を要し、手続を行うための多大な手間や費用が発生してしまうといった事態が生じます。

 このように植栽の「枝」の越境に関しては、法的な手続をとると手間と費用がかかるため、任意の交渉でいかに素早く植栽所有者に剪定をしてもらうかが重要となります。

 任意の交渉においては、弁護士に依頼して、弁護士名で、剪定要求に法的根拠があること及び訴訟提起まで視野に入れていることを踏まえて切除要求を求める内容の内容証明郵便を相手方に送付する等して、相手方に任意の履行を行う動機づけを持たせるといった方法が戦略の一つとして考えられます。