この点、サービサーが行うことのできる集金代行業務とは、事件性・争訟性のないいわゆる正常債権に関して、債務者の任意弁済の受領事務代行に限られると考えられます。また、事後的に紛争性が生じた場合には、履行の請求はせずに債権を委託者に返却しなければならないと考えられます。
 たとえば、支払案内をする場合であっても、その内容は、残高等を伝え、支払先を事務的に案内する程度のものにとどめなければならないと考えられます。支払を拒む意思を明らかにしている債務者に対し、履行の請求、支払の要求を行った場合には、弁護士法第72条との関係が問題になるでしょう。

 実際、弁済を延滞した債務者に対して、約定どおりの弁済を促したり、弁済金の増額又は減額を提示して弁済を求めるなどの請求行為を行う、定期弁済が困難と申し出た債務者に対し、具体的な弁済計画を策定した後に連絡するように申し向けたり、約定どおり弁済を行わないことを非難する発言をしたりする、債務者から一方的に切電されるなど支払案内を拒む意思がうかがわれるものや債務の存在に疑義を申し立てられているものなど明らかに事件性や紛争性が認められる債権について、委託者へ返却していないなどの業務実態が判明したサービサーに対し、法務省から業務改善命令が出されたことがあります。

 以上のとおり、サービサーは、特定金銭債権の債権管理回収業務に加え、法務大臣の承認を受けた場合には、兼業として集金代行業務を行うこともできますが、集金代行業務として許容されているのは、事件性、争訟性のない正常債権の受領事務代行に限られています。正常債権の受領事務代行という制限を超え、紛争性が生じた状態で、支払の要求等を行うことは、弁護士法第72条との関係が問題になります。
 どの程度であれば事件性、争訟性がないのか、どこまでが受領事務で履行の請求ではないのか、なかなか濃いグレーゾーンが横たわっているように思います。