今回は、賃借物件の転貸借と解除について説明します。

 賃貸借契約では、通常の場合、賃貸人に無断で転貸することは禁止されており、解除の原因としても定められていることが多いと思います。
 では、賃借人が無断転貸を行った場合にはすぐに賃貸借契約を解除し明渡しを求めることができるのでしょうか。

 判例では、無断転貸が行われた場合、原則として解除原因となることを認めつつ、特段の事情があり信頼関係の破壊がない場合には、解除を制限しています。
無断転貸は、原則として解除が認められるとの判断ですので、解除が認められやすいかというと、必ずしもそうではありません。特段の事情が認められ、解除が無効となった事例もあります。

解除が無効とされた事案

①最判平成21年11月27日

事案:土地の賃借人が、建物の建替について賃貸人に承諾を受けたが、建替後の建物の持分が、当初賃貸人に承諾を受けた持分とは異なったため、一部の土地につき無断転貸となった事案。なお、居住者等に変更はなかった。

② 東京地裁平成19年5月17日

事案:法人の役員の変更の場合であっても、賃借権譲渡の脱法的行為とみなしうる場合には、解除ができるとの定めがあったが、役員変更後に、賃貸人が役員変更の事実を知りながら更新契約を締結した場合には、黙示の同意があったと推定した事案。

 上記の例などからすると、無断転貸を理由とした解除を行う際に気をつけておくべき点がいくつかあると思います。
 まずは、無断転貸ではあるが、実質的に居住者や利用者、使用状況に変更がない場合には、無断転貸を理由とした解除が認められにくい傾向があります。例えば、個人商店をやっていた方に貸したところ、法人成りをした場合などは、利用者は実質的に同一ですし、使用状況も従前のままということで、特段の事情があるとされる可能性があります。
 次に、黙示の同意と見られる行動を行わないこと。無断転貸を知りながら更新契約を締結したり、長年にわたり転借人の居住を黙認し続けていると黙示の同意があったものとされるおそれがあります。
 賃貸借契約は長年にわたり継続することも多く、様々な事情もあり、なかなか契約を解除して明渡しを求めるには至らないこともあると思います。しかし、黙示の同意があるとされると、無断転貸を理由とした解除が認められなくなる場合もありますので、注意していただく必要があるかと思います。