弁護士 家永 勲

 

 前回のブログで、承諾のある転貸借関係について、賃貸借契約が債務不履行等により法定解除された場合について説明してきました。法定解除後、転借人は、賃貸人に転借権(占有権原)を対抗できなくなるため、明渡請求に応じなければならないという結論でした。

では、転借人はいつまで賃借人に賃料を払わなければならないのでしょうか。また、転借人が賃貸物件を明渡さずにすむ方法はあるのでしょうか。

今回は、法定解除後の法律関係についての判例を紹介したいと思います。

 

【最判平成9年2月25日】

(事案の概要)

本件建物の所有者であるA(賃貸人)は、X(賃借人、転貸人)に対して、本件建物を賃貸し、XはAの承諾を得て本件建物を改造のうえ、Y(転借人)に対して転貸した。

Aは、Xが賃料を支払わなかったため、昭和62年1月31日、賃貸借契約を債務不履行により解除した。Aは、昭和62年2月25日、X及びYに対して本件建物の明渡請求訴訟を提起した。Yは、昭和63年12月1日以降の転借料をXに支払わなかった。

Aは、同訴訟に勝訴し、平成3年10月15日に本件建物の明渡しをうけた。

Xは、Yに対して、昭和63年12月1日から平成3年10月15日までの転借料(又は不当利得)の支払いを求め本件訴訟を提起した。

争点は、YがいつまでXに対して転借料を支払う必要があるかという点であった。

 

(判決の内容)

「賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時(本件事案では昭和62年2月25日)に、転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了すると解するのが相当である。」(括弧内は家永追記)

 

では、YはいつまでXに転借料を支払わなければならないのでしょうか。

XとYの間の転貸借契約は、昭和62年2月25日の時点で終了しており、Yは、同日以降の転借料をXに支払う必要はないということになります。(民法では、契約が履行不能(社会通念上、契約で定められた債務の履行が不可能といえる状態)となった場合、契約は無効となると考えられているからです。)

ただし、Yは、建物の占有を続けている限り、XではなくAに対して、賃料相当の損害金を支払う義務が生じます。Aが債務不履行により賃貸借契約を解除したことにより、Yは、Aに対して占有権原(転借権)を主張できないため、不法占有となっているからです。

 

次に、Yが賃貸物件を明渡さないで済む方法はあるのでしょうか。

Yは、不法占有のままでは、Aの明渡請求にYは応じなければなりません。Yが、占有を適法に続けるためには、例えば、Aと直接賃貸借契約を締結するなど方法があります。

 

 転借人の地位は、賃借人が債務不履行すれば、賃貸人から追い出されうる地位にありますので、賃借人が賃料不払い等の債務不履行をしないように気を配る必要がありそうです。また、賃貸借契約が解除された場合にも、賃貸人と直接契約するなどの対処ができるように、賃貸人(オーナー)との関係も良好に保っておいたほうが良いでしょう。本件のYもAと直接の賃貸借契約を締結し、営業を継続したようです。