今回は、賃貸人からが賃貸不動産明渡請求を求めた際に、第1次的及び第2次的には、無断転貸ないし更新拒絶を理由として、判決時における明け渡しを請求し、第3次的には将来の訴訟終了時の明渡請求を求めた事例において、第一次的、第二次的請求である判決時における即時の明け渡し請求は認められなかったものの、第三次的な請求である契約期間満了にともなう将来の明渡請求は認められた事例についてご紹介したいと思います。

 

【東京地方裁判所平成20年7月18日判決】

 

 本件の事案は、おおよそ以下のようです。

 

 東京都渋谷区所在のビル11階部分(以下「本件建物」といいます)を所有する原告は、これを被告有限会社Y1(以下「被告Y1」といいます)に賃貸していました。原告は、被告Y1が、有限会社Y2に対して本件建物を無断転貸していると主張して、Y1に対して賃貸借契約の解除・明け渡しを求め(第1次的請求)、第2次的に、賃貸借契約の更新拒絶を理由として明け渡しを求め(第2次的請求)、第3次的に、本件建物を含む一棟の建物である▲▲ビルの建て替え計画による退去期限に解約申し入れにより賃貸借契約が終了することを理由として将来請求として明け渡しを求め(第3次的請求)、これらの各請求と併せて、賃貸借契約終了の日の翌日から本件建物明け渡し済みまでの賃料相当損害金(被告Y1及びY3に対しては、賃料の倍額の約定違約金)をの支払いを求めたというものです。

 

 判決は、第1次的請求及び第2次的請求については認めませんでしたが、第3次的請求については認めて、賃貸借契約が満了する平成21年3月31日限りで、Y1及びY2に対して、本件建物を明け渡しするよう命じる判決をしました。

 

 以下、判示された理由を少し詳しく検討してみます。

 

    原告が行った「無断転貸による賃貸借契約解除」の主張について

原告が、被告らが賃貸人である原告に無断で転貸したものとして賃貸借契約の解除を主張したのに対し、被告は、原告は被告が転貸していた状況を認識してこれを黙認しており、いわば黙示的承諾が成立していると主張して、無断転貸は成立しないと主張しました。

この点、判決は、原告が、本件建物に実際に立ち寄ることは一切なかったことを指摘し、被告Y1が被告Y2に本件建物を占有使用させたことは無断転貸に該当するというべきであるとしました。

ただし、本件では、背信性を認めるに足りない特段の事情(Y1がY2に転貸したとしても、その占有の実態としては被告Y1の従業員が増加した場合と比較して大差があるとはいえないこと、Y2への転貸以降も、本件建物の占有形態・占有名義に顕著な変更があったものではないことなど)があるとして、無断転貸による解除の効力は否定しました。

 

    「『マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下「円滑化法」)』により、更新拒絶が制限される」とする原告の主張について

 

 被告らは、円滑化法の定めにより、借地権者は、その有する借地権が円滑化法に基づいて権利変換され、権利変換期日が到来し、施行者の通知する明渡し期限までは従前の用法に従いその占有を継続することができるとされているから、被告ら(借地権者)が建て替え案に合意しない限り、賃貸人側から行う解除は制限されると主張しました。

 判決は、円滑化法による建て替えの場合に借地権を必ず権利変換の対象としなければならないとする根拠はなく、したがって、民法及び借地借家法による更新拒絶等が制限されるというべき根拠はないから、被告らの上記主張を採用することはできないと判示しました。

 

     本件建物は、平成7年以前から(証人Cによれば20年くらい前から)老朽化による建て替えの必要性が管理組合で議論されてきたこと、昭和28年頃というその建築年からして耐震性に不安のあることも伺われるから、今日、本件建物は建て替えが相当な状況にあるといえる。・・・(中略)・・そして、本件契約では、本件明け渡し条項により、同ビルが老朽化に伴い建て替えが決定し、取り壊し日が確定した場合には、本件契約は終了するものとする旨が定められていたのだから、被告らは、その場合に本件契約が終了することを予期しえたといえる。

   以上の事情によれば、原告が本件契約を終了させることは、上記退去期限である平成21年3月末日に終了するものとする限りにおいて正当事由があるというべきである。

 

 以上の認定により、原告の第三次的請求(将来、賃貸借契約が満了する平成21年3月末日限りで本件建物を明け渡すべきこと)については認容しました。(なお、損害金については、賃料相当額の限度で認容しています