はじめまして。本年度から弁護士法人ALGの一員となりました。これからどうぞよろしくお願いいたします。
継続的に商品を売買しているような場合に、基本取引約定書の中で、破産や民事再生、会社更生手続開始の申立て等の事由を当然解除原因とする条項が定められていたり、ファイナンス・リース契約において、ユーザーに破産や民事再生、会社更生などの申立てがあったときは、催告をせずに解除ができるとする条項が定められていたりすることがよくあります。
このようないわゆる倒産解除特約の有効性については、様々な議論があります。この点、会社更生手続について、所有権留保特約とセットになった倒産解除特約を無効とする判例(最三小判昭57.3.30民集36巻3号484頁)があります。しかし、この判例は、会社更生手続の趣旨・目的を害するという理由で特約の効力を否定したため、所有権留保特約がない場合や民事再生や破産にまでこの判例の射程が及ぶかには議論がされていたところ、平成20年12月16日、民事再生手続の場合について最高裁判決が出ました。
<事案の概要>
リース業者であるXは、Yとの間でフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約を締結し、リース物件を引き渡しましたが、その契約には、Yに民事再生手続開始申立てがあったときには契約を解除できるという倒産解除特約がありました。
その後、Yが民事再生手続開始申立てを行い、開始決定を受けたので、Xは、特約に基づいてYとの契約を解除し、Yに対してリース物件の引渡しと損害金の支払いを求め、訴えを提起しました。
<判決要旨>
「本件特約のうち、民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする部分は、民事再生手続の趣旨、目的に反するものとして無効と解するのが相当である」
すなわち、平成20年判決は、昭和57年判例と同様に、手続の趣旨・目的を害する特約の効力を否定したのでした。その理由について、判決は、①担保の目的物も民事再生手続の対象となる責任財産に含まれる こと、②ファイナンス・リース契約におけるリース物件は、担保としての意義を有するものであることから、特約によって担保を責任財産から逸出させ、これから再生しようとするユーザーがリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせてはいけないということを述べています。
このような制度の趣旨・目的を尊重する判例の流れを見てくると、債権者が最大限公平・平等に満足できることを大きな目的とする破産の場合についても、破産管財人の権限を害するような場合等、リース契約を継続することに意義が認められる場合には、倒産解除特約は無効とされる可能性が高いように思われます。
平成20年判決は、補足意見で民事再生手続のその後の手続の流れとリース業者の権利行使の関係についても述べられており、実務上参考になると思われます。
補足意見によれば、①ユーザーの民事再生手続開始の申立てがあった後は、民事再生手続開始の申立てと共に申し立てされる弁済禁止の保全処分の反射的効果として、リース業者がそれ以後のリース料金の不払いを理由としてリース契約の解除することが禁止され、②民事再生手続が開始されると、開始決定の効果として再生債権の弁済は原則として禁止されます(民事再生法85条1項)が、弁済禁止の保全処分は開始決定と同時に失効しますので、再生債務者であるユーザーは、リース料金について債務不履行状態に陥ることとなり、リース業者は、別除権者としてその実行手続としてリース契約を解除すること等ができることになります。これに対し、③再生債務者は、民事再生手続を遂行するために必要であれば、担保権の実行手続きの中止命令(民事再生法31条1項)を得て、リース業者の担保権の実行に対抗してくることが考えられます。
以上