今回も非公開会社を前提に、新株予約権(2)に引き続いて、新株予約権についてご説明したいと思います。今回は、種類株式を発行している会社における留意事項をご説明したいと思います。

1 種類株式に関する前提理解

 ある会社が、普通株式、A種類株式を発行している場合、当該A種類株式だけでなく、普通株式も普通種類株式であって、種類株式として取り扱われることに注意が必要です。

 そして、種類株式発行会社において、新株予約権の対象となる株式が譲渡制限株式である場合、その新株予約権の発行に際しては、原則として、当該譲渡制限株式を有する株主による種類株主総会が必要となります。

 そもそも、譲渡制限株式については、株主の個性が強く、株主はその議決権割合に大きな利害関係を有している以上、当該株式数の増加については、当該株式を保有する株主の意思を確認する必要があります。

 そうすると、そのような譲渡制限株式の発行を予約する新株予約権の発行については、当該新株予約権の発行によって、将来、当該譲渡制限株式が増加する以上、当該譲渡制限株式数が増加する場合と同様に、当該新株予約権の増加について、当該株式を保有する株主の意思を確認する必要があるということになります。

 そこで、種類株式発行会社において、新株予約権の対象となる株式が譲渡制限株式である場合、原則として、当該譲渡制限株式を有する株主による種類株主総会が必要になるということになります。

2 具体的事例の検討

 以上を踏まえて、具体的事例を検討したいと思います。

(1) 事例①

 普通株式、A種類株式及びB種類株式を発行し、かつA種類株式に譲渡制限をしている会社が、A種類株式を対象とする新株予約権を発行しようとした場合、いかなる種類株主総会が必要となるでしょうか?

 この事例①の場合、通常の株主総会決議のみならず、譲渡制限されているA種類株式を有する株主によるA種類株主総会決議が必要となります。

(2) 事例②

 次に、普通株式、A種類株式を発行し、かついずれの株式についても譲渡制限をしている会社が、普通株式を対象とする新株予約権を発行しようとした場合、いかなる種類株主総会が必要でしょうか?

 この事例②の場合、通常の株主総会決議のみならず、普通株式を有する普通種類株主総会決議が必要となります。このような事例はよくあると思うのですが、当該普通種類株主総会決議が失念されていることも見受けられますので、注意が必要です。