こんにちは。長谷川です。

 前回パワハラのセミナーの話を書きました。
 その際に寄せられた質問が、その後に受けた法律相談で寄せられた質問と全く同じで印象深かったので、そのことについて少しお話ししようと思います。(前回のお話しの補足的な位置づけとして読み流して下さいね。)
 どんな質問かというと、「被害者がパワハラだと思えばパワハラになるのではないのでしょうか?」というものでした。

 ご質問者によると、ある士業の方から、このような説明を受けたとのことでした。

 この説明は、メンタルヘルス的な視点から考えると、確かに正しい側面を有しているのかもしれません。
 ただ、法律的にどうか?と聞かれると、残念ながら、誤りであるということになります。

 法律的な視点から「パワハラ」に当たるか否かという問題は、パワハラ=不法行為として損害賠償請求の対象になる程の違法性を帯びているか否かという問題になります。つまり、「違法」なことだから、やった相手にお金を払わせても良いのだ!と言えるぐらいの行為でなければならないということです。

 こう書くと、「被害者がパワハラだと思えばパワハラになる」という説明が法律的には誤りであるということに恐らくご納得いただけると思います。
 そりゃ、そうですよね。極端な話、ある日突然に「あなたがこの間私にとった態度は、私にとってパワハラでした。だからお金を払ってください」なんて言われて、「分かりました、払います」なんて言えませんものね。
 法律的にパワハラであるといえる為には、あくまでも違法な行為として損害賠償金を支払わせることが妥当であると言える程に客観的に「悪い」行為でなければならないわけです。

 その為、ご相談者が「パワハラ」と訴える行為について「それは残念ながら、法律的にはパワハラとは言えません」と申し上げなければならないこともよくあります。

 一概に「パワハラ」と言っても、視点の置き方で、意味内容は全く異なってくるという点を頭の隅に置いておいていただけるとよろしいかなと思います。

 おしまい。

弁護士 長谷川 桃