第2 株券が発行されていない場合

 会社法により、株券を発行する旨定款の定めを置かない限り、株券を発行しないことになり(会社法214条)、株券不発行会社が原則的形態となりました。

 そして、その場合、株式つまり社員権は債権以外の財産権になるので、株式を対象とした強制執行は、債権執行の例によることになります(民事執行法167条1項)。

 とすれば、株式に対する差押は、前回紹介した債権執行の方法がそのまま当てはまるというわけです。ただ、株式の譲渡制限がある会社とない会社とでは、換価手続等に違いが出てきます。

1 公開会社

 公開会社の株式は、自由に譲渡することができます(会社法127条)。

 したがって、この場合の株式は換価可能な財産ということになり、債権者は債権執行の例により、債務者の有する株式を差押さえるよう執行裁判所に申立てる手続をとっていきます。管轄の執行裁判所は、債務者の所在地の地方裁判所か、第三債務者である株式発行会社の所在地の地方裁判所となります(民事執行法144条1項、2項本文)。

 その際、陳述催告の申立も同時に行われることや、二重差押え対策として転付命令の申立を行う方法があること等、「債権回収1」を参照してもらえば、理解しやすいと思います。

 換価手続は、株式会社において退社が認められない以上、株式を発行会社から取立てるということはできず、売却命令や譲渡命令によることになります。

2 閉鎖会社

 株式にはその譲渡に会社の承認を要する等定款の定めを置くことができます(会社法107条1項等)。

 差押えの対象にできる財産は換価可能なものである必要があります。とすれば、譲渡制限が解かれない限り、閉鎖会社の株式は換価できないことになってしまいます。

 したがって、債権者としては、閉鎖会社の株式に対して差押えを申立てる場合、株式発行会社の譲渡承認を証する書面を添付する必要があります。

 その他は、原則として公開会社と同様の手続により、換価等も行われることとなります。