こんにちは、前田です。
 今回は、債権回収の手段の一つである支払督促について、手続きの概略をお伝えします。

 「支払督促」という手段は耳にしたことのある方も多いと思います。これは、債権回収の様々な方法の中で、裁判所を通して最終的に強制的に債権回収を可能とするための手続きの一つです。

 裁判所を通した手続きには、民事調停・支払督促・訴訟等が存在しますが、債務者が裁判所外で任意に債務の履行をしない場合にはこれらの手段を検討することになります。
 もっとも、民事調停は裁判所が間に入るものの、あくまでも話し合いですので、債務者が話し合いに応じるつもりがなさそうな場合、あるいは裁判所外で話し合ったけれども、ぜんぜん話しにならなかったような場合等には、民事調停では紛争解決にならない場合も多いでしょう。
 そこで、最終的な紛争解決を求めるために考えられるのが支払督促や訴訟等です。

 支払督促は、訴訟に比べて簡易・迅速・低費用で債権者に債務名義(これがあれば差押え等による強制的な債権回収が図れます。)を得させることが可能です。
 なぜなら、債務者が債権の存在や未払につき争わない場合には、債務者の審尋等を経ることなく債権者の一方的な申立のみで、裁判所書記官が支払督促を発するからです(たとえば通常の訴訟の場合には、月1回ずつの期日の中で、双方言い分を尽くし判決するので、短くとも数ヶ月かかります。)。
 具体的には、債権者の申立により仮執行宣言というものを支払督促に付してもらいます。そして、仮執行宣言付支払督促正本が債務者に送達されてから2週間以内に債務者が異議を申し立てなければ、支払督促は確定し、通常の訴訟の判決が確定した場合と同じ効力を得るのです。
 そうなったら、この仮執行宣言付支払督促正本と、これが債務者に送達されたという送達証明書によって、債務者に対して強制執行の申立が出来ます。

 このように、支払督促が確定した場合にはかなり短期間で強制執行まで可能になります。この意味で、とても有効な手段といえます。

 しかし、注意していただかなければならないのが、支払督促に対して債務者が異議を申し立てる場合もかなり多いということです。
 異議の申し立てがあると、支払督促は確定せず、そのまま通常訴訟に移行することになります。そうすると結局、最初から通常訴訟を提起した方が良かった、ということもあり得ます。
 支払督促をかける場合には、常に通常訴訟に移行するリスク(すなわち、時間がかかる・費用も弁護士費用等が追加でかかるなど。)を念頭に入れておくべきです。
 そのうえで、債権の存在自体を債務者が争っていない場合等に、裁判所から支払督促が発せられた場合には素直に払う可能性があるならば、支払督促を選択してみるのもいいかもしれません。

弁護士 前田瑞穂