こんにちは。弁護士の長谷川です。ここ数日蒸し暑いですね。。。
 私は隔週水曜日に、徒然なるままに、書いていきますね。
 基本的には比較的身近で読みやすい話の回と、少々マニアックな話の回を順番に。。。と考えております。

 今回は、最近、個人的に知人から受けた相談で、ちょっとびっくりした話があったので、そのことを書こうと思います。 最近、色々な会社で導入が盛んな年俸制に関するお話しです。

 簡単にいうと、話の概要はこんな感じです。

 Aさんの会社は、社員全員年俸制(半年俸制)で、1年ごと又は6ヶ月ごとに契約を見直している。
 Aさんは、6ヶ月毎に契約更新なのですが、この1年のうちに、給与額が4割(!)も下げられた。4月に1.5割、9月に更に2.5割。契約更新の際に疑問を呈してみても、会社からは「嫌なら辞めてくれ」と言われるだけなので、渋々契約書にサインしてきた。
 ところが!!!この3月に、Aさんは4月から給与が更に4割減になる旨の提示を受けた。(昨年の3月時の数字から見ると、なんと、約64%もの減額!! )
 減額に際して、具体的な業務成績等の説明も勤務成績についての説明もなく、ただ「会社も苦しいから」というだけ。
 こんなのって、あり?

 年俸制って、会社の側からすると、年功賃金体系と違って業績を踏まえての大幅な賃金減額が可能な賃金体系だし、裁量労働制と組み合わせると人件費大幅カットできるから、こんなご時世、いろいろな会社で導入が増えているのは実によ~く分かるんですが。

 でも、でも、給与って、労働者側からしたら、一番大事な労働条件ですよね?なのに、たった1年で、64%も減額しちゃうって、こんなことやって、この会社、Aさんと揉めたら、かなりまずいんじゃないかしら?

 会社側からしたら、「導入したい、年俸制」。だからこそ、労働者側と揉めた時の備えとして、裁判所からみても「適法」な年俸制度を作らなきゃダメ、ですよね。
 じゃあ、その「適法」な年俸制度って、最低限、どんな内容があれば良いのでしょう?

 簡単に言ってしまうと、手続面と内容面ってことなんですが、紙面の都合もあるから、細かいことは省略して、ザーッと羅列しますね。

(1) 導入手続きが適法か否か

・(途中から年俸制を導入する場合)労働者の個別的同意があること ←賃金という重要な労働条件に関わる変更ですからねえ。。。

・就業規則の変更手続き ←ちゃんと変更しないと、労基法違反!

・労働協約があって、労働協約適用者に年俸制を導入するには、労働協約も改訂する。

(2) 内容面の合理性/適法性

・適用対象者の限定 ←要するに、年俸制って個々人の業績を賃金決定の基準にするわけだから、適用対象者も、努力次第で業績があがる職種/ポジションにいる人じゃないとフェアじゃないですよね?っていうお話です。それに、業績に対する責任を賃金っていうシビアな形で負わされるわけだから、それが正当化されるだけの権限やら裁量がある人じゃないとダメじゃないでしょうか。

・賃金決定基準の明確性/合理性 ←業績評価の基準を決めて、予め示さないと、会社側が恣意的に賃金減額できちゃうから、これは裁判所からみると、-評価ですよね。業績評価の基準をはじめ、評価方法や、減額幅も制度として決めてしまいましょう!
 更に!!!一番大事なのは、使用者の減額決定権。これが明確でないと、結局、使用者が一方的に減額できない、という結論になりかねない。ちゃんと定めて下さいね。

・公正な評価/決定の担保 ←評価者がちゃんと評価基準や評価方法を守れるように訓練するってこと

弁護士 長谷川桃