相談内容

 入居者の方から、部屋の中で悪臭がするので、調査してもらいたい、このままでは悪臭がひどくて部屋に住めないので、別の部屋を用意するか、宿泊費用を負担してもらいたいと連絡がありました。
 調査した結果、配管の一部に問題があることが発覚したため、修繕して報告したのですが、悪臭があった部屋に戻りたくないため引っ越すことにしたから引越代を払ってほしいと言われています。
 入居者の要求にどこまで応じるべきでしょうか。

回答

 賃貸借契約を締結している中で建物に悪臭が生じた場合に、賃貸人に責任が生じるのでしょうか。賃貸人としては、住居として貸しているのであれば、住居として利用するに足りる部屋を提供しなければならないため、悪臭の発生が真実である場合には、損害賠償義務を負担する可能性があります。

 ただし、悪臭というのは、人によって感じ方が違うことはもちろん、目に見えるわけではないので、原因の特定や悪臭の程度を正確に把握することに苦労することが多いでしょう。

 悪臭の程度について、裁判例において、損害賠償を認めるか否かの基準として、受忍限度を超えたか否かを基準として判断します。受忍限度は、その入居者自身が耐えられるか否かではなく、通常の一般人を基準として、その環境や悪臭の種類、発生頻度などを考慮したうえで、判断されています。また、悪臭防止法に基づき都道府県が定めている臭気指数を一つの基準として、悪臭の程度が測られています。

 悪臭については、修繕によって解消したのであれば、引越代等まで負担する必要はないと考えられますが、修繕前の悪臭により通常の生活ができないほどに、頻繁且つ強度の悪臭が生じていた場合は、修繕期間中の宿泊費用の負担や、修繕期間中の賃料の支払を受けることができないという結果になると考えられます。

 悪臭の原因箇所の特定については、入居者からの説明をもとに臭気計を活用しながら探るほかありません。特定された原因によっては、建物の施工時からの原因なのか、管理が尽くされていなかったのか、入居者の掃除不足だったのかなどによっては、誰が最終的な責任を負担するのか異なることになるでしょう。