相談内容
アパートのガラスが割れてしまったと賃借人から連絡があったため、状況を確認してきました。割れている箇所を確認すると、賃貸物件の内部から修繕しなければならず、修繕時には賃借人に立ち会ってもらう必要があります。
ところが、賃借人と話し合っても修繕の日程を決めてもらえず、ガラスの取り換え工事に協力してもらえません。
このような場合、賃貸人として、修繕義務を尽くすためには、賃貸物件に立ち入って修繕を実施して良いのでしょうか。
回答
賃貸借契約において、賃貸人は修繕義務を負担しています。しかしながら、ご相談の内容のように、修繕を実行するためには、賃借人の協力が不可欠な場合があります。このような場合について、どのように対応すべきかが問題となります。
まず、賃貸人による賃貸物件の修繕は、賃借人との関係からみると、義務として実行しなければならないものであることから、賃借人が修繕してもらうこと自体を放棄しているのであれば、修繕自体を実施しないという対応も考えられます。法的にいえば、賃借人が修繕請求権を放棄していると判断するということになります。
しかしながら、自らが所有している物件について、損傷が生じており、当該損傷から破損や汚損が拡大していくおそれもあり、修繕を行うことが自らの所有物件を健全に保つことは、本来自由にできるべきであり、賃貸人の立場から考えると、修繕することを権利としても考えることができます。
この両方の側面を民法606条1項及び2項が定めており、賃貸人は修繕義務を負う一方で、賃借人は建物の保存に必要な行為を拒むことはできないとされています。したがって、ご相談のような状況において、賃借人は、賃貸人の修繕実施を拒むことはできないと考えられます。
ただし、このような根拠があるとはいえ、賃借人に無断で立ち入ることができるわけではなく、協力しない場合の一時退去請求または一時退去すらも拒まれた場合には賃貸借契約の解除を求めることができるにとどまります。したがって、修繕に協力しない場合、一時退去を求めざるを得ないことを根拠に、協力するよう説得することが現実的と言えるでしょう。