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損害賠償として請求することはできます。
地裁に起訴された後弁論手続が終了するまでであれば損害賠償命令制度を利用できます。それ以外でも、示談交渉や民事訴訟手続で請求していくことができます。

起訴~弁論手続終了までに利用できる、損害賠償命令制度

 まず、損害賠償命令制度について、御解説いたします。

 損害賠償命令制度とは、殺人、傷害等の一定の刑事事件が地方裁判所に係属している場合に、その刑事事件を担当している裁判所が、引き続き犯罪被害者等による損害賠償請求という民事上の請求についても、刑事損害賠償命令事件として審理をするという制度です(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第23条第1項参照)。
 損害賠償命令制度には、以下のメリットがあります。

① 迅速な解決が期待できること(審理は原則として4回以内に終わります。)

② 手数料が安いこと(申立手数料一律2000円+予納郵券分(同法36条1項))

 もっとも、賠償命令制度は、刑事損害賠償命令事件の裁判に対して異議の申立てがあった場合などは、通常の民事訴訟手続に移行するので、終局的な解決になるという保障がない、というデメリットもあります。

その他の手段として、「交渉」「民事訴訟手続」も可能

 上記損害賠償命令制度を使わない場合でも、示談交渉や民事訴訟手続で請求していくことができます。まずは示談交渉を行い、それが決裂した場合、民事訴訟を提起するという流れになることが多いでしょう。

 民事訴訟手続においては証拠として、刑事事件の記録のうち必要と思われる部分(被害届や実況見分調書、犯人の供述調書等)や治療費・休業損害等の損害額を証明する資料を添付する必要があるでしょう。前者は、刑事事件の確定後、検察庁に刑事確定記録の閲覧・謄写の請求をすれば用意できます(同法第3条第1項)。

 本件のような傷害事件であれば起訴前に示談交渉が行われ成立することが多いですが、現実問題として、逮捕された人やその家族に資力がなければ、どのような手段を採ろうとも逮捕された人に治療費や休業損害の賠償金を回収することはできません。