4 要綱第七(強制わいせつ等致死傷等及び同致死の罪並びに強盗強姦未遂罪の改正)
第241条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第179条第2項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は7年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
3 第1項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
(1) 概要
ア 第1項
現行刑法第241条前段では、強盗犯人が強姦をしたときについて、強盗強姦罪として「無期又は7年以上の懲役」という重い法定刑が規定されておりました。一方で、強盗犯人が強盗をした場合には、このような規定はなく、一般的な併合罪の規定に従って、その処断刑は「5年以上30年以下の懲役」となっておりました。
そこで、刑の不均衡を解消するべく、同じ機会に、それぞれ単独でなされてもなお悪質な行為である強盗行為と強姦行為との双方を行うことの悪質性・重大性に着目し、これまで強姦罪と強盗罪との併合罪が成立するとされていたものについても、強盗強姦罪と同様の刑をもって処罰することができるようになりました。
イ 第2項
同一の機会になされた強盗行為と強姦行為とがいずれも未遂であった場合については、後遺の危険性が比較的小さかったことから結果が発生しなかった事案等、第1項の法定刑で処罰するのが酷な事案も考えられるため、任意的減軽を定めました。
「いずれも未遂」であった場合とされているのは、仮に、強盗行為と強姦行為のいずれか一方が未遂の場合に、任意的減軽を認めるとなると、処断刑の下限が懲役3年6月となり、強姦既遂の法定刑の下限(5年)よりも軽くなるというような刑の不均衡が生じるためです。
ウ 第3項
現行刑法の下では、強盗強姦致死罪はいわゆる結果的加重犯であり、殺意がある場合を含まないものと解されており、強盗の機会に行われた強姦行為又はその手段である暴行・脅迫からの死の結果が生じた場合において、殺意をもって死亡させたときは、判例によれば、強盗強姦致死罪ではなく、強盗殺人罪と強盗強姦罪の観念的競合となるとされておりました。
これに対し、本改正刑法では、強姦行為又は強盗行為のいずれかの罪に当たる行為により、殺意をもって人を死亡させた場合を含むものとしようとするものです。
なお、殺意をもって強姦又は強盗行為を行ったものの、殺害するには至らなかった場合には、同罪の未遂犯として処罰し、刑法第43条本文の規定により刑の減軽が認められます。
(2) 意見、反対意見
ア 第1項に関して
強盗強姦罪自体が加重規定として問題がないのかという点を考えておく必要がある。ある犯罪を犯した機会に重ねて別の犯罪を行うというのは、確かに悪質性が高いが、それは強姦罪と強盗罪に限られるわけではなく、通常は適宜量刑において併合罪加重された量刑の枠内で考慮される事情にとどまるものである(塩見委員、宮田委員)。
イ 第2項に関して
現行法の下では、強盗が既遂であっても強姦が未遂であれば強盗強姦罪は未遂となり、強姦を任意に中止すれば中止未遂の規定の適用があるが、法改正されると、その余地がなくなってしまい、中止犯の趣旨である政策的な効果が減じることになるのではないか(宮田委員反対意見)。
また、まず強姦に着手したが、被害者が可哀想になって強姦行為を中止した後、その後新たに強盗の範囲を生じて暴行・脅迫に及んだが、抵抗されて未遂に終わったという事案について、現行法では、強盗未遂と強姦未遂の併合罪(処断刑は5年以上30年以下の懲役)となるが、改正刑法での処断刑は、3年6月以上10年以下ということになり、逆転現象が生じてしまう。
第3 最後に
いかがでしょうか。現行刑法から法改正された新刑法については、このブログの記事を読めばおおよその枠組みは掴めるのではないでしょうか。
弊所では刑法改正はもちろん、あらゆる法律の改正に備えられるように、日々勉強会を重ねております。
お困りのことがある場合には一度ご相談いただければと思います。