というのも、先ほど「今回は」といいましたが、じつは2年前の2015年4月下旬ころにも似たような事件が起きていたことを覚えておいででしょうか。このときは、皇居を「オウム真理教皇居支部道場」や「恒心教 総本山」などと表示したほか、広島の原爆ドームを「核実験場」と表示するなど、非常に刺激的な改ざんが行われました。
 このとき、書き換えを行った3名は、軽犯罪法1条31号「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した」に該当するものとして処分されました。
 「悪戯など」とは、刑法で規定されている「偽計(計略・策略・誘惑を用いたり勘違いにつけ込んだりといった不正な手段一般をいいます。)」にくらべて、一時的で、さほど悪意のないまさしく「イタズラ」というべき内容で、ことの性質上他人の業務を妨害するようなものです。

 不正な手段か一時的なイタズラか、程度問題のようにも思われますが、この程度の行為であればこちら、という判断をするときに、過去の事例というのは非常に参考になります。
 2015年の例をひくと、今回の駅名の変更も、軽犯罪法違反として処分される可能性のほうが高いように思われます。

2 ボウリングの球落下事件

 また、先日は大阪府和泉市の団地からボウリングの球を投げ落とした小学生3名が、住居侵入と軽犯罪法違反とされています。
 軽犯罪法では、1条11号において「相当の注意をしないで、他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ」る行為を犯罪と定めています。これにまさしく該当するということでしょう。
 特に今回落とされたボウリングの球は5.8kg、落とした場所は団地の11階からということですから、これはまかり間違えば下を通る人が死んでしまう可能性すらあります。幸いけが人はいなかったようで、その点は本当に良かったと思います。

 そういえば当職も、昔小学生くらいのころ、夕方帰宅途中に団地の横を通った際、団地の3階か4階あたりから子ども用のバギーが降ってきたことがあります。あれは間違いなくまず今回とおなじ軽犯罪法1条11号にあたる事案でしょうが、だいぶ身体の近くにバギーが落ちたような覚えもあります。もし身体との距離が近く、狙って投げ落とされたと認定されれば、投げ落とした方には殺人未遂罪(刑法199条、同203条)が成立する可能性もありますね。
 当職としては、あのとき当たったり死んだりしなくて、本当に良かったと思います。

3 その他以外の軽犯罪

 軽犯罪法を見ると、ほかにも実にさまざまな犯罪がリストアップされています。
 たとえば、空き家に潜む行為(1条1号)、就職の能力があるのに職も生計を得る手段も住居もなくうろついている行為(1条4号)、電車の切符を買うために待っている列に割り込む行為(1条13号)、公共の場において人に嫌悪感を催させるような方法でお尻や太ももをみだりに露出する行為(1条20号)、こじき行為 (1条22号)、街路や公園でタンやツバを吐き、大小便をする行為(1条26号)、馬や牛を驚かせて逃がす行為(1条30号)なども軽犯罪法違反です。
 意外な行為も含まれていたかもしれませんが、これらの違反には、拘留(1日~30日)や科料(1000円~1万円)が科せられる可能性があると規定されています。 間違ってやってしまうことのないようにしてくださいね。