第2 執行猶予期間中に犯罪行為をしてしまった場合
1 基本
執行猶予期間中に再度犯罪行為をしてしまった場合、基本的にその犯罪行為について執行猶予がつくことはなく実刑に処せられることになります。
そればかりか、新たな罪について実刑となってしまった場合、元々の執行猶予判決も取り消されてしまいますので当初の判決で述べられた懲役期間についても実刑に処せられることになります。なぜならば、上で説明しましたように、あくまで執行猶予は執行猶予の期間中何事もなく過ごせば刑罰を無しにしてあげるよとの制度でした。これを逆に言えば、執行猶予の期間中に犯罪行為をしてしまえば刑罰は無かったことにはならないことになるのです。
具体例で説明しますと、当初懲役1年6か月執行猶予3年の判決を受けていた場合に、その執行猶予期間3年の間に何か犯罪行為を行い懲役2年の実刑判決がなされた場合には、1年6か月+2年=3年6か月の間刑務所に入らなければならないのです。
2 再度の執行猶予
もっとも、執行猶予期間中の犯罪行為について全く執行猶予の可能性がないわけではありません。
刑法25条2項は次のように定めており、これが「再度の執行猶予」と呼ばれています。
「前に禁固以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁固の言い渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも前項と同様とする。ただし、次条第1項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。」
「前項と同様とする」の前項とは通常の執行猶予の条文となります。
また、「ただし、~」については前回の執行猶予で保護観察がつけられていた人については再度の執行猶予は受けられませんと定めたものです。
そこで、再度の執行猶予が認められるためには①1年以下の懲役又は禁固の言い渡しを受けること、②情状に特に酌量すべきものがあること、③現在期間中の執行猶予において保護観察が付されていないこと、の三要件を満たす必要があります。なお、再度の執行猶予の場合には必ず保護観察に付されることになります。
また再度の執行猶予に付された場合には、前の罪の執行猶予についても取り消されないことになりますので、前の罪についても刑務所に入らなくてもよくなります。