近時、捜査を担当する警察官が取調べの際に暴言を吐いて自白をさせた事例や、職務質問の際に違法な手法を用いて証拠収集を図った事例などが問題となっています。
 このような事例では、違法な国家権力の行使であるとして、国家賠償請求の場面において問題となる上に、肝心の刑事裁判に対しても大きな影響を与えることとなります。
 今回は、捜査機関による違法捜査があった場合に刑事裁判でどのような取り扱いがなされるのかをご説明します。

 刑事裁判においては、捜査機関が押収した証拠物や、捜査時に被告人が自白した供述録取書などが証拠として提出されることとなりますが、これらの証拠には「証拠能力」が備わっていなければ証拠として認められません。そして、証拠能力が認められるための要件の一つに、「違法収集証拠ではないこと」というものがあります。
違法な手続きによって収集された証拠になぜ証拠能力が認められないのか、その根拠についてはいくつかの考え方がありますが、昭和53年9月7日最高裁判決においても、証拠の収集手続に「令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当ではないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるべき」と判示されています。