1 総論 同意殺人罪は、殺人罪よりも軽い刑で処罰

 刑法202条は、「人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁固に処する」と規定し、殺人罪の法定刑(死刑又は無期若しくは五年以上の懲役) よりも軽い法定刑で処罰しています。

 被害者の同意があるにもかかわらず同意殺人罪が処罰されるのは、人の生命はかけがえのない重要な法益であるために、被害者の意思よりも生命保護の要請が優越するからであるという説明がされています。もっとも、被害者の意思に反する殺人罪と異なり、被害者の意思に反しないことから、殺人罪よりも軽い法定刑が定められています。

2 同意殺人罪と殺人罪の区別

 同意殺人罪が成立するためには、被害者が死の意味を理解した上で行うことが必要です。したがって、被害者が死の意味を理解可能な精神能力を有していることが前提となります。たとえば、死の意味を理解できない幼児から同意を得たとしても当該同意は無効であり、同意殺人罪ではなく殺人罪が成立します(大判昭・9・8・27)。

 同意は任意に行われる必要があるので、暴行・脅迫等の影響により、同意以外の方法を選択することができない精神状態下で同意が行われた場合には、当該同意は無効となります。

 また、欺罔(欺く行為)によって被殺意思を生じさせた場合、欺かれなければ同意しなかったであろうと認められるときには、「真意に添わない重大な瑕疵ある意思」であるとされ、同意は無効となります(最判昭和33・11・21)。