皆さんこんにちは、今日のテーマは「クレジットカードと詐欺罪」です。

 お財布に余裕がある状態で、ご自分のカードを使って楽しいお買い物。これだけなら、なんの問題もありません。
 では、クレジットカードを不正に利用した場合はどうなるでしょうか。詐欺罪の成否が問題となります。

⑴ 他人名義のクレジットカードの場合

 カード決済は、カード会員の個人的信用力に基づいています。ですので、他人名義のカードを使うというのは、名義を偽っている以上、カード会員の個人的信用力というカード決済の根幹を揺るがすものなので、お店に対する詐欺罪が成立します。

 さて、例えば、友人が、「ごめん、このカードで○○の限定グッズ買ってきてくれないか。俺どうしても行けなくて。」と依頼してきて、いざそのカードであなたが限定グッズの代金を決済したとしましょう。この場合お店に対する詐欺罪があなたに成立するでしょうか。

 この場合、名義人たる友人があなたにカードの使用を許可している点からなんとなく詐欺罪が成立しなさそうですが、実は詐欺罪が成立します。名義を偽っていることには変わりがないのです。

⑵ 自己名義のクレジットカードの場合

 支払い能力がないのに、あるように装って、自己名義のカードを使って物品を購入する行為については、支払い能力を偽っているので、お店に対する詐欺罪が成立するとされています(東京高判昭和59年10月31日等)。感覚的にはわかりやすく、納得のいく結論ですね。

 しかし、学説は結構錯綜していて、カード会社に対する詐欺罪を成立させる見解、騙されて物品を交付した人と被害者を分けて、前者をお店、後者をカード会社と構成にする見解など様々です。

 クレジットカードの利用ひとつとっても、詐欺罪を成立させるための理 論構成、学説があります。普段何気なく行っていることの中に、刑法上の思わぬ論点が隠れているものです。

弁護士 上辻遥