1 逮捕・勾留されている被疑者の弁護を行なう場合、接見にはしばしば赴くこととなります。
接見時には、取調べその他の状況を聞いて助言などしたり、物を差し入れたりすることがありますが、捕まっている本人と外部の人物(家族・友人・勤務先などが多いです。)との連絡の中継ぎをすることもあります。

2 逮捕・勾留されたとき、一人で孤独に時間を過ごすというのは、心身にとり負担が大きいものです。そのため、外部の人物との必要な連絡というものはあります。(身内はおろか知人さえいない孤独の身、という場合は仕方ないでしょうが。)ただ、その中継ぎをする場合には、結構悩ましいことがあったりします。

例えば、誰にどのように伝えるかということです。多くの場合、逮捕・勾留というのは外聞のよくない出来事ですし、被疑事実の内容によっては輪をかけて周囲に言いづらいこともあります。(痴漢とか。)
このようなときの連絡は、誰に伝える、どこまで伝えるにつき被疑者から注文が出て、その結果なんとも話をしづらくなるときがあるなと感じます。

例えば、「母に○○警察署にいるので会いに来てほしいと伝えてもらいたい。ただ、何をしたかは自分で話したいので、そこはとりあえず濁してほしい。」と頼まれたような場合は、「すみませんが、お子さんが○○署にいて、一度あなたに来てほしいと言っているんです。これ以上のことは、今は言えないんですけど。」といった言い方になるといったところです。「どういうことか。」と尋ねられてもごにょごにょと、自分でもはっきりしない話をしているなと感じるものです。

3 あとは、弁護士も、外部との連絡により犯罪や証拠隠滅の片棒を担ぐことはできませんので、その点でも悩ましさを感じることがあります。「外にいる○○が事件の資料を握っているんだけど、そいつにそれを処分するよう伝えてほしい。」といったことを言われても、さすがにそれを伝えるわけにはいきません。守秘義務があるので、接見中にそのような話があったことを漏らしはしませんが、それと被疑者の要望を聞くかは別問題です。

これも、上記のような言い方をされた場合はわかりやすいですが、そのような判断しやすいものばかりとは限りません。会社ぐるみの粉飾決算などの事案で社長あたりのお偉いさんが捕まったような事件の弁護人となり、「俺が捕まっている間も会社の業務を滞らせるわけにはいかない。なので、○○という社員にこれこれといったことをしておくよう、指示を伝えてくれないか。」と頼まれたような場合は、それをそのまま伝えていいものなのかどうなのか、直ちに判断がつきかねない場合がありそうだなと感じます。