捜査は、捜査機関が「犯罪があると思料するとき」に開始されます。そして、捜査機関が、犯罪があると思料するに至った原因を捜査の端緒と呼びます。もっとも、犯罪があると思料した捜査機関は、その犯罪がいかに軽微な犯罪であっても、捜査を開始しなければならないわけではなく、捜査を開始するか否かは、捜査機関に合理的な考慮の余地を認めているものと考えられます。

刑事訴訟法には、捜査の端緒として、現行犯、告訴、告発、請求、自首、検視などが定められていますが、捜査機関が犯罪があると思料するに至る場合として、刑事訴訟法に基づく方法のみならず、マスコミ報道や他の事件捜査に関連して犯罪事実が発覚した場合も、捜査は開始されます。

実際には、事件を目撃した者の警察への通報や被害者の警察への通報もしくは被害申告をきっかけに捜査が開始されることが多いでしょう。親告罪の場合や告発が処罰条件となっている場合でなければ、通常、告訴、告発がなされることは多くないといえます。

告訴や告発は、書面または口頭で検察官や司法警察員に対し行うこととされており、口頭による場合には、検察官または司法警察員は、調書を作成しなければならないこととされています。(刑事訴訟法241条1項2項)。しかし、口頭で告訴・告発ができるとしても、告訴・告発の意思や内容を明確にするためにも、書面で行う方法が望ましいでしょう。検察官や警察官も人間である以上、日々、口頭で告訴・告発を受けたとしても、調書の作成は面倒くさいものです。特に、告訴・告発が要件になっていない場合であれば、被害申告、犯罪事実の申告として処理しようとすることも多いようです。

告訴・告発を書面でする際、告訴状・告発状を作成し、提出するのですが、犯罪構成要件を具体的に記載しておかないと、「ひとまず預かっておきますね。」と言われ、検察官や司法警察員に正式受理してもらえない場合があります。刑事訴訟法が、告訴権・告発権を規定し(刑事訴訟法230~234条)、告訴権者・告発権者に対して、事件処理の通知を義務付けていることや(刑事訴訟法260条)、犯罪捜査規範63条1項において、「・・・・受理しなければならない。」と定められていることから、検察官や司法警察員に告訴・告発の受理義務があるとは考えられてはいるものの、現実には、受理の拒否が行われているのが現状です。

検察官や司法警察員に対して、正式受理を強く求めることは必要ですが、正式受理したからといって、しっかり捜査してくれるかは別問題です。検察官や司法警察員も忙しいことから、その手助けになるように、できるだけ、具体的で的確な告訴状・告発状を作成し、可能な限り証拠資料を提出することが重要となります。

以上のように、告訴・告発ができるとしても、効果的に行うには、容易ではありません。実際は、弁護士等の法律家へ相談することが必要になるものと思います。