ショーペンハウエルの著作に「知性について」というのがあります。

 この本は、ボクが大学生の時に出会ったのですが、ボクにとって自分の知性を磨く上での基本的な指針になった本です。

 法律の勉強をして弁護士を目指したのも、大学院で経済学や経営学を学んだのも、そしてこれから順天堂で医学を勉強する動機づけになったのも、この本に書いてあったことが大きな影響を与えています。

 そして、もしかするとボクが40代まで独身だったのも…(笑)。

 その本には確かこんなことが書いてました。今、手元にその本がないので、記憶を頼りに紹介します。

 「自分の能力を特定の専門科学に捧げるためには、その学問に対する大きな愛が必要であるが、他の学問に対する大きな無関心もまた必要となる。それは、ひとりの女を娶らんために、他の全ての女を諦めなければならないのと同様である。
 偉大な精神の持ち主はそのようなことに人生を捧げることができない。全体への洞察をあまりにも深く心に掛けているからである。
 彼は、軍隊の将軍であって隊長ではない。オーケストラの指揮者であって演奏家ではない」

 特に好きなくだりは、「ひとりの女を娶らんために他の全ての女を諦めなければならないのと同様である」という部分です。こんなフレーズを気に入っているから、40代まで独身生活を送ってしまうんです(笑)。

 ちなみに、この考え方は、今、法律事務所の経営者である私にとって大変有益な視座を与えています。

 なぜなら、経営者に必要な眼識は、「全体への洞察」だからです。

 まあ、今となっては、ひとりの女を娶ってしまったわけですから、腰を落ち着けて、法律事務所の経営トップとして、「全体への洞察」を深く心に掛けたいと思います。