また嫌な事件が起こってしまいましたね。

 26歳の女性が群馬県内で拳銃で殺害されるという事件が発生してしまいました。

 彼女は元々、茨城県に住んでいたそうなのですが、元・交際相手からのストーカー被害に遭っていて、最近、群馬県に引っ越してきたばかりだったとか…。

 報道によると、その被害者は、元交際相手から過去に暴行を受けたこともあり、その元交際相手は、暴行罪で罰金刑を受け、茨城県警からストーカー規制法に基づく警告も受けていたそうです。

 当然、その元交際相手が一番怪しいのですが、現在、行方が分からないそうです。益々怪しいですよね。

 さて、この事件で弁護士として、ひとつ大変気がかりな点があります。

 被害女性は、群馬県に引っ越した際に、住民票の閲覧を制限する手続きを取っていたそうです。

 ということは、彼女は、ちゃんと引っ越しの際に住民登録を変更する手続きをしたということになります。

 にもかかわらず、引っ越した矢先に殺害されている。

 彼女の引っ越し先を探すには、住民票を見る以外に方法がないのではないかと思います。

 ここで嫌な予感がするのは、弁護士、行政書士などの専門家や、探偵事務所が関与していないか心配になってきました。

 弁護士などが住民票を入手する場合、「職務上請求」というのですが、訴訟などを提起する場合に、相手方の住所を特定するために、代理人という立場で住民票を請求することがよくあるんです。

 探偵事務所の場合は、職務上請求はできませんので、顧問弁護士などに頼んで、住民票を手に入れることがあるようです。もちろん、純粋に探偵事務所として、被害女性を尾行などして、その居場所を突き止める場合もあります。

 そして、ストーカーの中には、この制度を悪用する輩が一部いるんです。

 過去に、探偵事務所が調査をして被害女性の居場所を突き止め、ストーカーがその女性を殺害したという事件が実際に起こっています。

 弁護士などは関与していないと信じたいですが、弁護士人口の激増で食べていけない弁護士が増えている現状を考えると、ちょっと心配です。

 また、探偵事務所も首都圏を中心に乱立しており、探偵業法という取締法規が制定されたとしても十分ではなく、このような悪行に手を染める探偵事務所もあるようです。

 弁護士事務所として、図らずもこのような悪行に手を貸すことがないようにするためにはどうすればいいでしょうか。

 ストーカーの手口としては、例えば、女性に対して、”詐欺被害や金銭トラブルに関わる損害賠償請求とか、貸金の返還請求などという大義名分で、弁護士などに相談してくることが考えられます。

 今回の事件でも実際に、その被害者は、元交際相手の男性から、「交際中に使ったお金の返還」を求められていたそうです。

 弁護士として注意しなければならない点は、男性が相談者の場合で相手方が女性の場合です。
 ボクの知る限りでは、ストーカーは女性よりも圧倒的に男性に多く(同じ男性として情けない限りですが)、しかも殺害などの強行犯に及ぶのは、大概が男性ストーカーです。女性のストーカーが男性被害者を殺害したなどという話は聴いたことがありません。

 したがって、相談者が男性で、かつ女性を相手方とする紛争に関しては、その女性との関係をよく聴取した上で、受任するべきか否かを慎重に決める必要があると思います。
 男女の友人間での金銭トラブルというのは希で、ほとんどが痴情のもつれです。原則として、受任しないという対応が必要なのではないでしょうか。

 とは言っても、経営難に陥っている弁護士が、”おかしい。ストーカーかもしれない”などと薄々感じていても、”背に腹はかえられない”というこで、知らなかったことにして受任する、なんてことも十分あり得ます。

 このような弁護士さんに対しては、何らの防止策もありません。

 だって、ストーカーだと薄々気づいていながら、これに協力しているわけですから…。

 今回の事件も、同業者が関与していないことを願います。

 そして、被害者のご冥福をお祈りするとともに、一日も早く犯人が逮捕されることを祈ります。