弁護士 金﨑 浩之 

 昨日、東京を主な拠点とする法律事務所の若手(?)経営者が集まる会食があったので参加してきました。
 若手に?マークが入っているのは、ボクを除けば30代の経営者ばかりだったからです。まあ、ボクを除けば若手です。

 さて、今回の会食でおもしろい情報が得られました。

 今、東京などの大都市を拠点とする弁護士法人の地方進出を阻もうという動きが、地方の弁護士会で起きているのです。
 この会食に参加していた弁護士法人は、ある地方に進出するためオフィスを構えたのですが、その地方の弁護士会が入会を認めないため、業務を開始できない状態に陥り、損害を被っているそうなんです。
 そこで、その弁護士法人は、その地方の弁護士会に対して損害賠償請求訴訟を提起しているんです。

 このような事態が起こる諸悪の根源は、弁護士登録にかかる推薦制度です。弁護士がある地域で弁護士業務を開始するためには、その地域の弁護士会に登録する必要があり、弁護士法人が地方に進出する場合も例外ではありません。
 その登録の際には、当該地域の弁護士会に既に所属している会員弁護士の推薦が必要となっているんです。
 例えば、ボクが経営している弁護士法人が、千葉に進出しようとしているとします。そのためには、うちの所属弁護士を千葉弁護士会に入会させて、千葉支部の常駐社員弁護士としなければなりません。
 しかし、うちの弁護士が千葉弁護士会に入会するには、既に千葉弁護士会の会員となっている弁護士の推薦が必要となっているのです。
 もし推薦人が得られなければ、千葉弁護士会に入会できない。入会できなければ千葉で弁護士活動を開始できない、という事態に陥ります。

 そもそも、日本は、アメリカのように州ごとに司法試験を実施し州ごとに弁護士資格を発行しているわけではありません。
 司法試験に合格し司法修習を終えれば、日本のどこでも弁護士としての仕事がきる制度になっています。

 それなのに、自分が仕事をしたい地域の弁護士の推薦が得られなければ、その地域での弁護士登録ができず、業務を開始できないというのは、法的に根拠がない職業選択・営業の自由の規制となるはずです。
 法的に根拠がないということは、要するに違法だということです。
 このようなことを法律の専門家の集団である弁護士会が堂々とやっているわけです。

 地方に進出しようとしている弁護士法人は、一般的に言って規模が大きく資金力もあります。当然営業力・集客力も大きいのです。
 そのような弁護士法人が進出してくると、その地域の弁護士は自分たちの仕事が奪われてしまうので、その地域で弁護士活動をさせないようにしたい。今日の推薦制度はこのような地方進出のボイコット手段として機能しちゃっているんですね。

 しかも、さらに事態を悪化させているのは、弁護士活動を行う事務所を先に確保しなければ、弁護士会入会のための申し込み自体ができないという奇妙な仕組みです。
 つまり、例えば千葉県で弁護士活動をしたい場合、千葉県内のどこかにオフィスを借りてからでないと入会手続きの申し込みができないわけです。
 入会手続きが完了するまで、その地域で弁護士活動は一切できないことになっています。
 しかし、先にオフィスを構えてしまっているので、そのオフィスの賃料は支払わなければいけません。
 それでも、無事入会手続きが完了すれば、その地域での弁護士活動を開始できるのでまだよいのですが、入会させてくれないと、その間ずっと賃料を支払い続けないといけないわけです。
 こんな変な制度、一体誰が考えたんですかね。

 ボクは、今訴訟をしているその弁護士法人を応援しています。是非勝って欲しいですね。
 そして、このおかしな弁護士村のギルド制度に早く風穴を開けて欲しいと思っています。