皆さん、こんにちは。
今回は、有給休暇を使用した場合の休業損害についてみてみたいと思います。
休業損害とは、傷害により仕事ができなくなり又は不十分な就業を余儀なくされたことにより、その治癒または症状の固定時期までの間に生じた収入減、すなわち得べかりし利益を得られなかったことによる損害を意味します。
給与所得者の場合、事故前の収入を基礎として受傷によって休業したことによる現実の収入源とされます。
この点、有給休暇を使用した場合、現実の収入源はないことになります。
しかし、自賠責保険でも、有給休暇の使用は休業損害と認められています。
そして、裁判実務でも、現実の収入源がなくても、有給休暇を用いた場合にも休業損害として認めらています。多数の裁判例は、休業損害の発生をそのまま認めるか、あるいは、有給休暇請求権の喪失による損害としてとらえて得られたはずの賃金に相当する損害を認定しています。
事故により欠勤したが有給休暇を使用したため給与は全額支給され、計算上、休業損害が生じていない場合であっても、有給休暇は労働者の持つ権利として財産的価値を有するものであることから、他人による不法行為の結果、有給休暇を使用せざる得なかった者は、それを財産的損害として賠償請求できるということによるといえます。
そして、1日の有給休暇のもつ財産的価値は年収を1年間の日数で除した額によって算定されます(名古屋地判平成15年9月19日、大阪地判平成20年9月8日、東京地判平成18年10月11日)。
ただし、有給休暇1日当たりの金額に争いがある事案において、賞与を除く年収を稼働日数(366日から勤務先所定の休日を差し引いた日数)で除した金額を相当であるとした裁判例があります(東京地判平成18年10月11日)。
なお、少数ながら慰謝料で斟酌すべきとする裁判例もあります(大阪地判平成11年12月24日、名古屋地判平成12年1月19日)。
弁護士 髙井健一