二段階右折とは、道路の交差点で右折する際に交差点の側端に沿って右折することをいいます。

 原動機付自転車(以下、「原付」といいます。)は、交通整理の行われている交差点で二段階右折をすべきことが指定されている道路及び道路の左側部分に車両通行帯が3以上設けられている道路(以下「多通行帯道路」といいます。)においては、二段階右折することを義務付けられています(道路交通法34条5項)。なお、多通行帯道路については例外もあります(同条同項ただし書)

 私は、二段階右折をしている原付を見たことがなく、ほとんどの原付が二段階右折義務に違反して右折を行っているのが実情だと思います。

 このような道路交通法上の二段階右折義務に違反して右折した原付が交通事故を起こした場合、交通事故の過失割合に二段階右折義務違反はどのような影響があるのでしょうか。

 この点について判断した裁判例(平成16年3月10日判決自保ジャーナルNo.1572)をご紹介します。

 事案は、信号機の設置された交差点において、二段階右折義務に違反して右折しようとした原付と対向車線を直進していた自動車が衝突したというもので、事故発生時の双方車両の対面信号機は赤色及び青色矢印でした。

 信号機の灯火は、赤色及び青色矢印なので直進しようとする自動車は赤信号無視です。
 本件の被告となった自動車の運転手は、二段階右折しなければならない場合には、直進するものが従うべき信号に規制されることになるから、本件事故発生の際の原付の対面信号の表示は、青色矢印灯火ではなく、赤色灯火であったという前提で過失割合を決定すべきと主張しました。

 自動車の運転手の主張に従い、双方の対面信号の表示が赤色として過失割合を考えると、基本的には原付40%:自動車60%の過失割合となります。

 しかし、裁判所はこの意見を容れず、原付の対面信号の表示は青色矢印として過失割合を判断しました。
 その場合、基本的には原付0%:自動車100%の過失割合になるところですが、原付に二段階右折義務違反があったことに照らし、原付5%:自動車95%の過失割合を認めました。

 原付が二段階右折義務を尽くしていれば本件事故は発生しなかったと思われますが二段階右折義務違反の過失を高く評価することなく、過失割合を5%としたのは、ほとんどの原付が二段階右折義務違反をしているという実情に配慮した妥当な結論であると考えます。